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平田篤胤と銚子

 天狗小僧の子孫が天狗湯を始めたのが千葉県の東端の銚子。

銚子の名前は酒を注ぐ銚子口に利根川河口の形状が似ているからだという嘘のような本当の話だ。
もっとも銚子の名前が使われだしたのは江戸時代のことなのでそれほど古い話ではない。

さて、この銚子周辺を今までに何回も歩き回っていると、天狗小僧寅吉の話(仙境異聞)を書いた国文学者の平田篤胤の名前を見ることがあった。
やはり何か関係があるのか?

私はあまりこの平田篤胤のことは知らない。
本居宣長の後継者的国文学者で復古神道の確立者といった事くらいがぼんやりと浮かぶくらいだ。

さて少し調べてみよう。

Wikipediaによれば、生まれたのは、秋田(出羽)の久保田藩の大番組頭(大和田清兵衛祚胤)の四男だというので、これは茨城(常陸国)とは関係が深い。
秋田の久保田藩は常陸国を制した佐竹氏が移った土地であり、代わりにそれまでの秋田氏などは常陸国にやってきた。
秋田の美人は皆茨城県から連れて行ったなどとのつまらぬ噂も広まった。

篤胤は秋田では養子に出され、父母の手で育てられず苦労して20歳になると、脱藩・出奔して国もとを飛び出し江戸にやって来た。
江戸でも苦学の連続だったようだが、25歳の時に備中松山藩士で山鹿流兵学者の平田藤兵衛篤穏(あつやす)に認められて養子となったとある。
26歳で結婚し、本居宣長の死後初めて国学を知り、国学の勉強を始めたというからかなり遅いスタートだ。
ただ、すぐに本居宣長の門人と自称したというからかなりの才覚の持ち主だったのだろう。

文化9年(1812年)37歳で愛妻を亡くし、幽界研究に興味をもち、復古神道研究に没頭していったようだ。
やはり愛するものを失ったことが霊界を信じる入口になったようだ。

篤胤は江戸での私塾だけでは物足りなく、その門人を広げる思いもあり、文化13年(1816年)に下総・上総を巡っている。
まず、船橋から神崎神社を廻り、東国三社(香取神宮・鹿島神宮・息栖神社)を訪れた。
そこから銚子・飯岡を廻って、天之石笛(あまのいわぶえ、いしぶえ)を手に入れて持ち帰り、これが現在代々木の平田神社に保存されている。

石笛

長さが50cmほどの石笛で石に空洞が空いて笛のように左右に穴がある。風が吹くと笛のように鳴るらしい。

ただこれは本当に笛のような形だが、この地方で見つかっている石笛はこのような形の物は少ないようだ。

銚子の少し南の玉崎神社はこの平田篤胤も神社裏に祀られているが、旭市の天然記念物として神社に置かれている「天の石笛」は次のようなものであった。

石笛02

平田神社に大切に保管されている「天之石笛」については、篤胤の弟子が著した 「天石笛之記」にこれを取得したいきさつが書いてあるという。

要約すると、篤胤が不思議な笛を手に入れる夢を見たという。
そして東国三社(香取・鹿嶋・息栖)参りの旅に出て、その足で銚子にやってきたときに、神社で夢に見たのとそっくりな石を見つけた。それは、神社に近所の海岸で見つけた村人たちが奉納したものだった。
それがほしくてたまらなくなった篤胤は神主に何度も頼み込んで譲ってもらったものだという。
そして、江戸にもどった篤胤は、屋号を「伊吹乃屋(気吹舎)」に改名したという。

「天の石笛」については飯岡などで昔話として語り続いている話がある。日本昔ばなしに収録された話が以下のサイトにある。

日本昔ばなしデータベース:天の石笛(あまのいしぶえ) 

時化の時にそれを知らせてくれた石笛だという。
自然にできた穴に大風が吹き始めるとそれが笛のように鳴ったという。

篤胤はこの三社めぐりの翌年も下総などの旅をしている。
天狗小僧寅吉にあったのは三社めぐりの翌々年であった。

篤胤が江戸で屋号を「伊吹乃屋(気吹舎)」に改名したというのがこの笛を得たことだというが、息栖神社境内に置かれた芭蕉の俳句もきっと頭にあったことだろう。

 『 この里は 気吹戸主(いぶきとぬし)の 風寒し 』 (芭蕉)

この気吹戸主は江戸時代はこの息栖神社の祭神で 黄泉の国から逃げ帰ったイサナギが汚れを水の流れで洗い流した時に、その流れから生まれた神という。

息栖神社はこのように汚れた土地を清浄化して蘇生回復の力があるのだという。

東国三社は直角三角形の頂点に配置された神社で、鹿島・香取の両神宮を弓の弦として息栖神社から矢を射ると石岡、筑波、岩間方面に矢は飛んでいく。
岩間山の十三天狗が活動していたあたりに行く。 これも何かの関係がないとは言い切れない。

もっともこの直角三角形に配置したのは息栖神社を大同2年(807年)に少し移動したからで、人工的に配置されたものだ。

kasimaline.jpg

このあたりのことは昔書いた下記の記事などを参照ください。(まあ大昔の記事で内容も恥ずかしいが)

常陸から見た日本の夜明け: 


天狗湯を探せ | コメント(0) | トラックバック(0) | 2019/08/03 06:05
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