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日本語と縄文語(10) 「こおろぎ」「きりぎりす」に「ハッタギ」

 この縄文語の本を読みながら地方に存在する物を指す言葉(方言の違い)の分布を調べていくのも言語学研究では大切なことなのかもしれない。
調べてみると面白くなってはまっていきそうになる。
そして過去の有名な先生が提唱した理論に当てはめて考察をする。

しかし、これは少し危険ではないかと思う。
地名や方言などが伝播したととらえるのは少しばかり違和感もある。

今回は、昔、「こおろぎ」と「きりぎりす」が逆に呼ばれていたらしいということから始めよう。

枕草子:九月つどもり、十月ついたちのほどに、ただあるか なきかに聞きつけたる きりぎりす の声 ・・・・・

新古今集: きりぎりす 鳴くや霜夜のざむしろに衣か たしきひとりかも寝ん

このように昔の書物や和歌に「きりぎりす」の鳴く表現が出てくる。
しかも、秋や晩秋、冬の初めのころに鳴くというのだ。

この頃に鳴くのは「コオロギ」であって、「キリギリス」は鳴かない。

koorogi.png
(こおろぎ)

kirigirisu.jpg
(きりぎりす)

これは過去にも著名な国学者や言語学者が考察していたりするようで、どうも「コオロギ」と「キリギリス」がいつの間にか呼び名が入れ替わったとみられている。
また地方に伝わるこの二つの虫の呼び名も全国的に逆転した呼び名で呼ばれている地域もあるという。
いまでもコオロギをキリギリスと呼ぶ地域も各地にあるようです。

こうすると都から地方に言葉が伝播していくという考え方になるのでしょう。

では「日本語になった縄文語」の本の中には何と書かれているのでしょうか

【kirkir 擬音語】+【se という】+【i もの】
であり、
また、童謡唱歌「虫の声」の2番の歌詞に
「キリキリキリキリ こおろぎや ・・・」とある。

昔はコオロギの鳴音をキリキリ・・・と表現していたのが、次第に「コロコロ・・・・」名表現されるようになり、虫の名前も
「キリギリス」 ⇒ 「コオロギ」 となった。
また、キリギリスも別種名となった。

アイヌ語で虫を【kikir キキリ】と言う。 これも虫のなく音の擬音語から来ており、コオロギや今のキリギリスも同じ仲間であった。

こおろぎが「キリキリキリキリ と鳴くのか? 一般には「コロコロコロコロ」とか「チリチリチリチリ」とか表現される場合が多いのですが、羽根をこすり合わせてオスのコオロギがメスを引き寄せるために出す音ですから 「キリキリキリキリ」とも聞こえます。
夏の虫キリギリスも同じく羽根をこすり合わせて鳴きます。

鈴木健さんの本にも地方の方言としての虫の名前として、

コオロギのことをキリギリスというところ:盛岡、秋田、岩手、信濃、岐阜、埼玉、山梨など

また出羽ではコオロギを「キース」、静岡庵原でコオロギは「キーキ」、
神奈川津久井でキリギリスを「キーッチョ」

などというとある。

また「左利き」を「左ギッチョ」というのもこのあたりから来ているのではないかともいう。

まあ、私もこのブログで以前 イソップ童話の「アリとキリギリス」は 昔は「セミとアリ」のはなしだったと書いたことがあります。
(⇒ こちら

もう一つ、イナゴやバッタのことを「ハッタギ」と呼ぶ地区が東北を中心にたくさんあります。

仙台、会津、岩手、秋田・・・・・・・・

今は大分いなくなりイナゴを捕まえて佃煮にして食べるなどという習慣もほとんど見られなくなりましたが、年配の方にはこのイナゴ採りを「ハッタギとり(東北方面)」などと言っていた事を懐かしむ人もおられるでしょう。

inago.jpg
(いなご)

秋田大館市の扇田地区に伝わる盆踊り(扇田盆踊り)は、地元では「ハッタギ踊り」といいます。
これは踊る姿がとびはねるバッタやイナゴに似ているからだと言いわれています。
この扇田(おおぎだ)地区は戊辰戦争の激戦地(慶応4年の大館城攻城戦)でもありました。

この【ハッタギ】という言葉がどこから出てきた言葉なのか、今の日本の言語学でも良くわかっていないようです。

【patta パッと跳ねる】 ⇒ バッタ
【patta パッと跳ねる】+【ki 虫】 ⇒ ハッタギ


となります。

アイヌ語やこの縄文語を理解しないとこれらの言葉の解明は難しいと思います。

決して、都から伝播したものとも思われません。
奈良や京都などが都とになったより、もっとずっと前からこれらの言葉は使われていたのだと思います。

またアイヌ語であったとしても、アイヌから伝わったのではなく、昔の縄文人が使っていたものが、今ではアイヌ語にはかなり伝承されて、本土内などでは一部だけが残っているものでしょう。

これからは、テレビなどの影響で地方の方言は益々消えていくと思われます。


今までの「日本語と縄文語」を1から読みたい人は ⇒ こちらから


日本語と縄文語 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2020/05/11 06:04
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