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甲子夜話の面白き世界(第1話)天狗にまつわる話

甲子夜話の世界第1話

昨年春より江戸時代に書かれた「甲子夜話」(かっしやわ)をFBの友人が物語の語りのお稽古と称して毎日のように紹介していただいている。

書かれたのは長崎(肥前)平戸藩の藩主であった松浦清(まつらきよし=静山)公で、内容も藩制のこと、歴史のこと、動物の事、地理のこと、文化芸能のこと、自然のこと、超自然現象や庶民の暮らしまでありとあらゆる事が紹介されている。

藩主を辞した1821年から約30年間の間書き綴った随筆であり、その量は実に膨大で、当時の文を読みなれていなければ、理解も難しいところも実に多い。
それを、平易に直しながらFBでUPしていただいているので、それを許可を頂いて、新たなブログを作成してそちらに順番にUPさせていただいている。(ブログ:甲子夜話のお稽古・・・こちら

ただ、面白い内容もじっくり読まないと理解に苦しむ事もあり、ここに面白そうな内容を少しずつピックアップして、これからすこしずつ紹介していきたいと思います。


<甲子夜話の面白き世界(第1話) 天狗にまつわる話(その1)>

《1》 天狗にさらわれた男の話し

 わしの下僕で、上総(かずさ:現千葉県の一部)生まれの男がいる。
年は56歳だそうだ。その男がかつて天狗にさらわれたという。
その男の話しはこうである。

『今から15年ほど前の春3月5日のお昼少し前のことでした。
両国橋を歩いていますと、急に気持が悪くなってきたのです。
すると見知らぬ者から声をかけられました。
そして、その者の方に行くと・・・ もうその後のことは何も覚えておりません。
気が付いた時には、信濃の善光寺の門前に立っていたのでございます。
着ている着物は前に覚えのある着物ですが、もうあちらこちらが破けてばらばらになっておりました。
また頭は禿げ上がり、さかやき(月代)をそりあげたような姿で、脇の髪は伸びてバラバラでした。
そして日時を確かめると10月28日ですので、8ヶ月以上経っていたのです。
そして、ぼんやりと辺りを眺めていると、偶然にも、故郷でかつて知っていた人に遭ったのです。
そして、その人の助けで、なんとか一緒に江戸にもどってくる事ができたのです。
ただ、8ヶ月以上も何処でどうしていたのかまったく記憶になく、何か食べようとすると胸がムカムカして何も食べられません。
特に五穀の類はまったく口に入れることが出来ませんでしたが、サツマイモだけは食べる事ができました。
そしてしばらくの間、便には木の実のようなものが混じって出てきて、それが暫く続きました。その木の実の便が出なくなると腹の調子は元にもどり、普通の穀の食に戻ったのでございます』

この話しが本当ならば、天地間には人類に非なるものもあるのかもしれない。
天狗にさらわれたのか、または山の中で木喰(もくじき)上人のような生活を送っていたのか・・・・
   (巻之七 〈ニ七〉 ← クリック 元話

《2》 天狗にとりつかれた若い尼僧の話し

嵯峨天竜寺の瑞応院から印宗和尚が下記のような文をよこした。
『天竜寺の領内に遠離庵と云う尼庵があり、そこに始めて仏門に入りたての年のころは十九の尼がいた。
それが、今年の3月4日の日暮れ時に、他の尼4~5人と連れ立って、山に蕨採りに出かけたときのこと。
蕨をそれぞれ採り終って、バラバラに庵に戻ったのだが、この若い尼だけが帰ってこなかった。
庵では狐タヌキに惑わされたのか、はたまた何か事故にでもあったのかと心配して、皆で一心に祈願していた。
そうした中、17日の夕暮れになって、隣村(清滝村)の樵(きこり)が薪を採りに山に入り、深い谷間で、若い尼が布を洗っているのを見つけた。ぼんやりとした様子を不審に感じて、「どうしてこんな山奥にこられたのか」と尼に声をかけた。
すると「私は愛宕山に籠もっている者です」との返事。
こんな娘尼が山に籠もっているとは、半ばあきれて村(清滝村)につれて帰った。
帰ってくると「私は遠離庵の尼です」というので、夜に籠を呼んで乗せて庵に帰した。
庵にもどると、普段無口なこの尼は何かわからぬ事を大声でしゃべり出した。
そこで、侠気の藤七を呼び、尼と対峙させると、尼は「帰る、帰る。 まず飯を食いたい」と云った。
飯を用意すると、なんと山盛りの飯を三椀も平らげた後に、気を失ってしまった。
暫く気を失って眠っていたが、その後目を覚ましていつもの様子に戻った。
そして、山で何があったのかを聞くと、次のように話した。
『山で蕨(わらび)を採っていたら、年の頃は四十ばかりの杖をついた僧侶があらわれ、こちらへ来いと声をかけてきた。
どことなく貴い僧侶に見えたので近づくと、「この杖を持ってみよ」と云うので、持つと「目をつぶりなさい」と言われたので、その通りにした。
そのままじっとしていると、どこか遠くへ来たと感じた。
目を開けると、そこには金の御殿や宝の仕舞ってある宝閣があった。
そして、「ここはみだりに中に入る事を禁ずる」と申し聞かされ、団子の様な物を「食うべし」と与えられた。
この団子を口に入れると、とても美味く、今でもその甘さが忘れら得ない味で、ほかに何も食べなくても、少しも空腹にならないと云う。
またこの僧侶は、「汝は節操がある正しき者なので、愛宕山へ行って籠って修行をすればきっと良い尼になるだろう。
また、修行の間には、時々諸国を見物させてもやろう。 そうだ讃岐の金毘羅様へもお参りさせよう」と言った。
この若い尼が庵に戻ってからも、次の日には「僧が御入りです」と言うのだが、他の人にはその姿は見えなかった。
そのため、これは天狗の仕業に違いないといい定めて、この新尼には親里へ戻して庵から出てもらった。

これまで天狗は女人には取り行かぬものだったが、世も末、天狗も女人を愛する様になったのか・・・。

巻之四十九 〈40〉  ← クリック 元話

《3》 寺の木陰に天狗を見たという話し

 最近、ある老医から聞いた話だが、この7月13日の前日の朝八時頃の話だが、
御箪笥町に真言宗の千手院と云う大きな寺があり、ここに、大きな樅(もみ)の木がある。
その樹の影に不審な人が見えたという。
その人物は樅の木の枝の間に腰かけて厳然としていて、顔赤く、鼻高くて、世にいう天狗というものの様だった。
これを見た人は皆、大いに驚いたという。
これはまさに、真の天狗であろうと思う。
また、この姿を見たものは、鵜川内膳と云う人の婢僕がまず見つけて、その他に数人が見たという。

巻之五十 〈八〉  ← クリック 元話


 (続く)

甲子夜話の面白き世界 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2021/09/27 16:46
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