常世の国(5) 少彦名(すくなびこな)命

常世の国に渡った人物(神)として忘れてはいけないのが、少彦名命(日本書紀:すくなびこなのみこと、古事記:少名毘古那神)です。
これは、大国主(大黒様、大己貴命(おおなむちのみこと))が出雲で、この日本国の国造りをしている時代ですから、いつ頃になるのでしょうか? まあ神話ですから良くわかりません。
大国主が出雲の海岸で、国造りをどのように進めていけばよいかを悩んでいると、海から見知らぬ小人がガガイモの舟に乗って近くにやってきます。言葉もわからず汚い身なりの小人です。
この小人が「少彦名(スクナビコナ)」なのですが、書紀などの記述はここでは省きます。
出雲に渡ってきたスクナヒコナは日本語が喋れなかったが、物知りの「山田のかかし」が素性を知らせることになりました。
どこからやってきたかは明らかではありません。言葉が通じませんので、日本から見れば異国からやってきたのでしょう。
この少彦名命は薬の知識を持っていたり、温泉を見つけてその効用を知らせたり・・・様々な知識が豊富で、大国主は少彦名命の力を借りて国造りを進めていく事となりました。
『古事記』上巻の記述では、この国を作り固めた後、少彦名神は常世の国に渡ったとあり、日本書紀では、大国主神が少彦名命と力を合せて国作りの業を終えた後、少彦名命は熊野の岬に行き、そこから“常世郷”に渡ったとあり、、または淡嶋に行き、登った粟の茎に弾かれて常世郷に渡ったと書かれています。
この淡嶋の場所が和歌山県加太の淡嶋神社等、幾つかの説がありますが、粟の茎に弾かれて、空を飛んで常世の国へ行ってしまいます。
空を飛んでいくので、常世の国は海の彼方なのか、天上にある国なのかはわかりません。
少彦名命は薬の神様、温泉の神様としても有名ですが、やってきた時に乗っていたガガイモの舟は天乃羅摩船(アメノカガミノフネ)といわれ、空を飛びますので、航空関係神様としても祀られています。

<ガガイモ>
上記の写真は、私が空き地で見つけたガガイモの実だと思うのですが、半分に割れ、中の綿毛のついた種はすでにどこかに飛んでいってしまっ後だとおもいます。
こんな小さな舟に乗ってやってくるのだから小人に違いないですね。
そこから後に「一寸法師」のモデルになったとも言われるようです。
少彦名命が飛んでいった先の常世の国がこの常陸国という考えもありそうに思います。
茨城で少彦名命を祀る有名な神社は酒列磯前神社と大洗磯前神社があります。
那珂川の入口の両側を抑えている大変重要な神社で、共に延喜式の大社となっています。
また、那珂川の中流域に「粟」という地域ががあるが、この那珂川は常陸国風土記では「粟川」とかかれており、この地に鎮座する「阿波山上神社」のご神木に少彦名命が舞い降りてきたとの伝承があり、この阿波山上神社にも祀られています。
常世の国は基本的には不老不死の国であり、理想郷とされていて、そこへは海の波を越えていかねばならず、中国の蓬莱山や天空の城ラピタのような天上界に近い場所にある国などとも考えられます。
また、海の底の竜宮城がその国だというお話も存在します。
有名な浦島太郎の昔ばなしの元となった「浦嶋子」の話しが神話の世界や風土記にも残されていますので、興味のある方はお調べください。
(常世の国シリーズ 完)
「常世の国」を最初から読むには ⇒ こちら
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