香澄の里-天王崎

 行方市の旧麻生地区に天王崎という霞ケ浦に少し突き出した岬がある。

今は白帆の湯という温泉施設もあり、昔から市民に慕われた場所であった。
また昔は海水浴もできた。
麻生の街もそれなりに発達し、行方市の中心ではあるが、交通アクセスという点では、車でないとなかなか不便である。

この天王崎は今までにも何度も訪れており、夕日の美しさでは絶景ポイントだと思っている。

常陸風土記に書かれている香澄の里がどのあたりかと考えてみたが、やはりこの周辺なのであろうか。


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常陸国風土記の行方郡の章に次のように書かれている。
「郡家より南へ二十里のところに、香澄(かすみ)の里がある。
古い伝へに、大足日子の天皇(景行天皇)が、下総の国の印波(い なみ)の鳥見(とりみ)の丘に登られたとき、ゆっくり歩きながら国を望み、東を振り向いて「海にただよふ青い波と、陸にたなびく赤い霞の中から湧き上がるやうにこの国は見えることだ」と侍臣におっしゃった。
この時から、人は、「霞の郷」と呼ぶやうになった。
里の東の山にある社には、榎、槻、椿、椎、竹、箭、やますげが多く繁る。
里より西の海にある洲は、新治の洲といふ。洲の上に立って北を遥かに望めば、新治の国の小筑波(を つくは)の山が見えることから、名付けられた。
 香澄の里より南十里のところに、板来(いたく)の村がある。
近くの海辺の渡し場に駅家が置かれ、板来の駅家といふ。
その西は榎の林になってゐる。
飛鳥の浄御原の天皇(天武天皇)の御世に、麻績(をみ)の王(おほぎみ)が、都を追はれて住んだ場所である。
海には塩を焼く藻、海松、うば貝、辛螺、蛤などが多く住む。」
(口訳・常陸国風土記より)

常陸国風土記が編纂されたのは8世紀前半であるが、この景行天皇(ヤマトタケルの父)がこちらに来たのが何時ごろのこととかははっきりしないが、古墳の時期などからしても4世紀頃と考えるのが一般的だと思う。
でもこの頃は霞ケ浦も印旛沼も一体の大きな内海であったといわれている。

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まず風土記に書かれていることからこの香澄の里を想像してみたい。

行方郡の郡家は白雉4年(653年)に、茨城郡の8里と那珂郡の7里を割き、700戸を合わせて別けて行方とし、郡家は風土記には男高(小高)まで7里と書かれているので、現在の玉造街の夜刀神などのある場所に近いと考えられますがいまだはっきりしていません。
しかし男高まで7里、香澄の里まで20里ですから小高から13里、またそこから板来(潮来)まで10里ですから自然に場所は特定されてきます。

小高から潮来の中間より少し潮来よりとなると麻生というよりももう少し南東の永山あたり(牛堀の少し西)でしょうか。
現在この近くの山側に「かすみの郷公園」があります。

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しかし現在のイメージからするとこの霞ケ浦に突き出した「天王崎」あたりが北に筑波山を望む香澄の里という感覚に近いと思います。
この霞ケ浦も砂浜を復元しようと防砂ブロックを置いて、砂を敷き、涙ぐましい努力をしています。
霞ケ浦で海水浴ができたころはこの湖岸に水の中に滑り込む滑り台まであったようです。
上の写真で湖に飛び出すように白い土嚢のようなものを積んでいますが、これが防砂提です。
でも風の強い日はこのあたりもかなり波が高くなります。

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この岬のそばに「八坂神社」が建っています。
この神社も元々は牛頭天王を祀る「天王社」(寺院)でした。
天王崎の名前もおそらくこの天王社からつけられたものなのだと思います。

こちらの神社については前に書いた記事を参照ください。
「水郷麻生(茨城百景)」:記事は⇒ こちら

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さて、最初に引用した常陸風土記には「景行天皇が、下総の国の印波(い なみ)の鳥見(とりみ)の丘に登られた」とあり、ここから香澄の里を眺めたとあります。
この鳥見(とりみ)の丘がどこかについてもいくつかの候補が上がっています。
一般的には北総線印旛日本医大駅の北側1kmほどにある「鳥見(とみ)神社」の丘であろう言われていますが、印西市小林の「鳥見(とみ)神社」も風土記の記述からすると可能性は高いようにも思えますし、少し東寄りの安食駅近くの栄町あたりも候補地です。

この頃はやはり香取の海(または「○○の流れ海」と呼ばれるおおきな内海で現在の霞ケ浦も利根川も印旛沼も皆つながっていましたので想像するのも大変そうです。
その手助けとなるのが海面を上昇させた地図で「FloodMaps」が良いと思います。

麻生 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2017/05/20 10:17
コメント
No title
その昔の姿を想像するのに、神社の説明板は良い手がかりですね。フローマップも参考になります。年内にはこの辺りを散策したいと思います。
kincyansさん
> その昔の姿を想像するのに、神社の説明板は良い手がかりですね。フローマップも参考になります。年内にはこの辺りを散策したいと思います。

コメントありがとうございます。
事故は大変な目に合われたようですが、だいぶお元気になられた様子をFBで拝見しています。
きっと自転車にもすぐ載られるようになるでしょうから是非天気の良い日にお越しください。
ここには日帰り温泉もあり夕日がきれいですよ。

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