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茨城の難読地名(その22)-羽生

難読地名22

シリーズ1回目からは ⇒ こちら 

羽生 【はにう】【はにゅう】 行方市(旧玉造町)、稲敷市(旧桜川村)、常総市(旧水海道市)

この羽生はほとんどの人が読めると思います。でも最近有名になっている2人、フィギアスケートの羽生結弦(はにゅう ゆづる)選手と将棋の羽生善治(はぶ よしはる)名人は何故、同じ字なのに読み方が違うのだろうと気になっていませんか?

行方市の霞ケ浦湖岸にある「羽生」は「はにゅう」と読みます。 また近くに「橘郷造神社(たちばなごうぞうじんじゃ)」という神社があり、ここにヤマトタケルが東京湾を渡るときに波を鎮めるために入水した「弟橘姫(おとたちばなひめ)」がまつられており、この羽生湖岸に次のような伝説が残されています。

「弟橘姫のさしていた笄(こうがい)が、霞ヶ浦に流され、この羽生地区に打ち上げられました。
流れついた笄を守るかのように鳥が群がっていたり、その笄はこの神社まで、羽を生やして飛んだ、または鳥がくわえて運んだ、ともいわれています。
そのため、この地区の名前を「羽生」といい、この地区が「立花」とついたとも言われています。」

笄(こうがい)とは、昔女性が髪にさしていた櫛の一種です。
この話からすると、これが名前の由来の様に思いますね。でもそれは違います。

「角川日本地名大辞典(茨城)」によると、羽生(はにう)は上記に紹介した3か所が出てきますが、地名の由来は旧玉造町のヤマトタケル伝説のある「羽生」について、「地名は、埴輪の産地にちなむという」と書かれています。

もう少し全国の地名を調べてみると、

<はにう>という読み
新潟県佐渡市羽二生(はにう)

<はにゅう>という読み
宮城県伊具郡丸森町羽入(はにゅう)
宮城県黒川郡大郷町羽生(はにゅう)
山形県東根市羽入(はにゅう)
茨城県常総市羽生町(はにゅうまち)
茨城県稲敷市羽生(はにゅう)
茨城県行方市羽生(はにゅう)
栃木県下都賀郡壬生町羽生田(たにゅうだ)
埼玉県羽生市(はにゅうし)
新潟県糸魚川市羽生(はにゅう)
新潟県南蒲原郡田上町羽生田(はにゅうだ)
富山県小矢部市埴生(はにゅう)
富山県下新川郡朝日町山崎(羽入)(はにゅう)
石川県鳳珠郡能登町羽生(はにゅう)
岐阜県可児市羽生ケ丘(はにゅうがおか)
岐阜県加茂郡富加町羽生(はにゅう)
大阪府羽曳野市埴生野(はにゅうの)
兵庫県豊岡市竹野町羽入(はにゅう)
島根県松江市八束町波入(はにゅう)

<はぶ>という読み
高知県四万十市中村羽生小路(はぶしょうじ)
(その他のハブ地名)
東京都大島町波浮港 トウキョウトオオシママチハブミナト
富山県南砺市土生 トヤマケンナントシハブ
静岡県焼津市飯淵 シズオカケンヤイヅシハブチ
愛知県豊田市羽布町 アイチケントヨタシハブチョウ
京都府南丹市園部町埴生 キョウトフナンタンシソノベチョウハブ
大阪府岸和田市土生滝町 オオサカフキシワダシハブタキチョウ
大阪府岸和田市土生町 オオサカフキシワダシハブチョウ
兵庫県朝来市羽渕 ヒョウゴケンアサゴシハブチ
兵庫県美方郡香美町香住区土生 ヒョウゴケンミカタグンカミチョウカスミクハブ
和歌山県岩出市波分 ワカヤマケンイワデシハブ
和歌山県有田郡有田川町土生(はぶ)
和歌山県日高郡日高川町土生(はぶ)
和歌山県東牟婁郡串本町吐生(はぶ)
岡山県苫田郡鏡野町土生(はぶ)
広島県尾道市因島土生町(はぶちょう)
広島県府中市土生町(はぶちょう)
山口県岩国市土生(はぶ)
山口県山陽小野田市埴生(はぶ)
愛媛県松山市西垣生町、東垣生町(はぶまち)
愛媛県新居浜市垣生(はぶ)
愛媛県西予市三瓶町垣生(はぶ)
愛媛県越智郡上島町弓削土生(はぶ)
福岡県中間市垣生(はぶ)

ハブ地名には「土生」「垣生」「埴生」という地名がたくさん出てきました。

皆さんは「埴生の宿(はにゅうのやど)」という歌を御存知ですよね。
でもこの「埴生」とはどんなところを言うのかはあまり知られていませんね。

「埴生(はにゅう)の宿」とは、床も畳もなく「埴」(土=粘土)を剥き出しのままの家のこと(日本童謡事典)と書かれています。
また「埴生」は、粘土性の土の意だと国語辞書に書かれています。

すなわち「羽生」地名の元となるのはこの「埴生」=粘土性の土を意味し、そのような土が取れる場所に名づけられた場所だといえそうです。「埴(はに)=土」 + 「生(う)」="ある"ところ=場所 という意味になりそうです。

また羽生を「ハブ」と読むのは数は少ないのですが、「ハニウ」が省略されて「ハブ」になったと解釈できます。

また粘土ということではなく耕作できる土を「埴」と解釈すると、「埴生」「羽生」などは、耕作するのに適した場所という意味にもなります。羽生田、羽入田などはその例ではないかと思います。

この「埴」を焼き物の粘土に使える土と解釈すると、埴輪、素焼器、焼物、などに適した土が採れる場所となります。
この焼き物を焼く人が、「植師(はにし)」であり、「土師(はじ)」ですね。

この「埴生」とほとんど同じように使われているのが「丹生(にう)」という地名です。こちらの例を調べた結果を以下にのべます。
ただ、「丹(に)」とは赤色の顔料に使える土のことです。

<にう>のつく地名
北海道勇払郡占冠村ニニウ
北海道中川郡美深町仁宇布(にうぷ)
秋田県北秋田市阿仁打当(にうっとう)
福島県郡山市西田町鬼生田(おにうた)
三重県多気郡多気町丹生(にう)
兵庫県美方郡香美町香住区丹生地(にうじ)
奈良県高市郡高取町丹生谷(にうだに)
奈良県吉野郡下市町丹生(にう)
和歌山県有田郡有田川町丹生(にう)
徳島県那賀郡那賀町小仁宇(こにう)
徳島県那賀郡那賀町仁宇(にう)
熊本県熊本市南区城南町丹生宮(にうのみや)

茨城の難読地名 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2018/07/13 11:29
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