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茨城の難読地名(その34)-行方、行里川

難読地名34

シリーズ1回目からは ⇒ こちら 

行方 【なめがた】【なめかた】 行方市
行里川 【なめりかわ】 石岡市

今回の行方市(なめがたし)は、茨城の方は大概の方が読める地名だが、その他の地域の方はほとんどが読めない。
その名前の由来については、多くの方が常陸国風土記に書かれている由来を信じて疑わない。

まあ8世紀初頭にまとめられた風土記であるので、そこに書かれているのだからまあ信じてもよいように思うのだが、これも不思議なものだ。少し検証してみたい。

常陸国風土記の行方(なめかた)郡の条の内容を口語訳で概略を記しておきましょう。

まず、行方郡の成り立ちについては、白雉四年(653)に、茨城の国造である 壬生連麿(みぶのむらじまろ)と、那珂の国造である 壬生直夫子(みぶのあたひをのこら)が申し出て、茨城と那珂の郡からそれぞれ八里と七里(合計15里、約700戸)を提供して行方郡としたと書かれています。
そして倭武の天皇(ヤマトタケル)が現原(あらはら)の丘に上って四方を眺めて「車を降りて歩きつつ眺める景色は、山の尾根も海の入江も、互ひ違ひに交はり、うねうねと曲がりくねってゐる。峰の頂にかかる雲も、谷に向かって沈む霧も、見事な配置で並べられてゐて、繊細な(くはしい)美しさがある。だからこの国の名を、行細(なめくはし)と呼ばう」とおっしゃったと書かれています。

常陸国風土記に行方の名前の由来が「なめくわし」だと述べているのです。
でもこれは続いて書かれている、「小舟に乗って川を上られたとき、棹梶が折れてしまった。よってその川を無梶河(かぢなしがは)といふ。」といわれるように、今の「梶無川(かじなしがわ)」の名前の由来を述べていることと同列なのです。

きっともっと昔から「かじなしがわ」だったはずですし、「行方」も昔からこの地に「なめかた」と呼ばれる地名が存在したのだと思われます。
縄文語を研究されている鈴木健さんの「常陸国風土記と古代地名」の中にこの「行方」について書かれた記事があります。
それによると鈴木さんはこの風土記に書かれている「行方」の由来説明はどう考えても「無理なこじつけ」だとされています。
そして古代アイヌ語(縄文語)で「泉のほとり」「泉の上」の意であると書かれています。
行方市の湖岸近くにヤマトタケル伝説の地として「玉清井(たまきよい)」と呼ばれるわき水の池(泉)があります。この池の上に「井上」と名づけられた地域があり、「井上神社」という古社があります。
この井上もまさに縄文語で言う「行方」と同じ意味になるといいます。

行方=冷泉の上=井上 というわけです。

もう2ヶ所茨城県には「行」=「なめ」と読ませる地名が存在します。
石岡市の旧水戸街道の杉並木の端「行里川」【なめりかわ】と、下妻市の「行田村」【なめだむら】です。

<行里川>(なめりかわ)
角川および平凡社の地名辞典にはこの地名の解説はないが、「石岡の地名」(石岡市教育委員会編)(平成8年10月出版)によれば、江戸後期にはみられる地名だが、諸説として、この地の北境に園部川が流れるが、この川は昔は滑川と言ったとあり、この部落も滑川と呼ばれた、滑川の起こりは新誌(新常陸国誌)に平常土人の之の川を徒歩するに河底深く滑らかにして転倒の恐れあり、故に滑川を以て名とするなるべしと、江戸重通が大掾清幹にやぶれたのも之の川の橋破壊され渡り難くされた事が大きな原因であったと言われているだけ滑る川であったようである。・・・・ などと書かれている。
まあこれもどこか自己満足的な書き方に見えなくもない。

<行田>(なめだ)
角川日本地名大辞典では下妻市の「行田村(なめだむら)は江戸期から明治11年まで使われていた地名で、古くは滑田と書き、語源は、毛野川(現在の鬼怒川)流域の肥沃で滑らかな田の意という(下妻近傍地名考) と書かれています。
日立市には「滑川」がありますので、「行(なめ)」=「滑(なめ)」という解釈もあるのでしょうか。

行方以外は昔は「滑」の字を使っていたらしいが、「行」に変えたのは、この行方の読みが影響しているようだ。どこか品が良いと感じて漢字を変えたというのが当たっているのではないかと思われる。


<行を「なめ」と読む地名>
山形県鶴岡市行沢(なめざわ)
山形県尾花沢市行沢(なめさわ)
福島県南相馬市小高区行津(なめづ)
茨城県石岡市行里川(なめりかわ)
茨城県行方市(なめがたし)
群馬県富岡市妙義町行沢(なめざわ)
千葉県勝浦市浜行川(なめがわ)  行川アイランド
千葉県いすみ市行川(なめがわ)
神奈川県茅ヶ崎市行谷 (なめがや)
高知県高知市行川(なめがわ)

などが検出されました。

茨城の難読地名 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2018/07/20 08:19
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