茨城の難読地名(その36)-安居

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安居 【あご】 笠間市(旧岩間町)
この安居(あご)は、延喜式に載っている古代官道の駅家(うまや)の「安侯(あご)」が置かれていた場所だと考えられています。
10世紀初期に書かれた延喜式には神社名などのほかに古東海道の駅家(うまや)や東山道の駅家(うまや)の駅名が載せられています。また古東海道の終点である常陸国国府(現石岡)からさらに北上し、東山道と連絡すると思われる駅名が記されています。
(古東海道)常陸国府 ⇒ 安侯 ⇒ 河内(水戸市) ⇒ 田後 ⇒ 山田 ⇒ 雄薩 ⇒ 高野 (福島県矢祭町高野)⇒ 長有⇒ 松田(東山道)
この駅家は16km間隔にあり、馬を常駐していました。
現在石岡の鹿の子から常磐高速に沿った旧官道の跡が見つかっており、この安侯駅家は 安居(あご)地区の常磐高速沿いの地点がその跡だと考えられています。
延喜式の記載の前にはこの「安侯」駅家は、日本後記に812年に安侯、河内、石橋、助川、藻嶋、棚嶋の6駅が廃止されたことも記されているため、一度廃止されたものが延喜式【927年)では復活している(安侯馬二疋の記述有)事になります。
平安時代には「安侯郷(あごごう)」という地名が「和名抄」に記載されていますので、「安居(あご)」の地名はこの「安侯(あご)」から来ていると考えられますが、何時どのように変わったものかはわかっていません。
全国の「安居」という地名を調べてみました。
≪安居≫地名一覧
<アゴ>の読み
茨城県笠間市安居(あご)
静岡県静岡市駿河区安居(あご)
静岡県富士宮市安居山(あごやま)
和歌山県西牟婁郡白浜町安居(あご)
<アンゴ>の読み
京都府八幡市内里安居芝(あんごしば)
京都府八幡市八幡安居塚(あんごづか)
<その他>の読み
岩手県遠野市附馬牛町安居台(あおだい)
富山県南砺市安居(やすい)
愛媛県松山市安居島(あいじま)
高知県吾川郡仁淀川町土居(安居土居) (やすいどい)
福岡県久留米市山川安居野(あいの)
この中で読みが「あご」と「あんご」に注目してみます。
まず、京都府八幡市の安居(あんご)ですが、これはおそらく「安居=あんご」は僧侶たちが一定期間、庵に籠って修行することを安居(あんご)といった言葉が地名になったと思われます。
梅雨時など雨季に草木が生え繁り、昆虫、蛇などの数多くの小動物が活動するために外を歩いてむやみな殺生をしないように、庵に籠って修行したことに始まるといわれています。
こちらは一般的には「あんご」と読ませていますので、この「あご」」とは少し違っているように思えます。
アゴ=網子 で網を操る漁師の集団が住んだところ という解釈があるようですが、この茨城県の安居は現在の地形ではイメージはわきませんが、昔は涸沼川が近くをながれ、蛇行しているような場所で川での漁が盛んなところから名前が付いた可能性もあります。
同じ「安居」を「あご」と読む和歌山の「安居」も日置川の川が大きく蛇行している開けた場所ですので、これは「網子」か?
一方静岡市の安居は久能山の麓の海岸寄りですので「僧侶の安居(あんご)」「海岸での漁師の網子」の両方が考えられます。
富士宮市の「安居山」は身延線沿線の比較的山の多い地域です。 こちらは僧侶がこのあたりの山に籠ったのでしょうか。
笠間の安居にも「千日堂」などもあり、信仰も盛んな場所だったと思われますので、いろいろな解釈もできそうです。
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