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茨城の難読地名(その53)-潮来

難読地名53

シリーズ1回目からは ⇒ こちら 

潮来 【いたこ】 潮来市

読みづらい地名も見慣れてしまうと、あっさり読めてしまう。
でもどこかその由来もわかっているようで判らない。
そんな地名はよくありますね。この「潮来」などはその代表でしょうか。

「潮来」は【いたこ】と読みますが、江戸時代始めは「板久」や「板来」と書いていました。
それをこの地が水戸藩領ということで、この地を視察した徳川光圀(みつくに:水戸黄門)が1698年に「潮来」に改めさせました。

歴史的に判っていることを順に記しておきましょう。

< 常陸国風土記>【板来】【伊多久】
 1) 「此より南十里に板来の村あり。近く海浜に臨みて、駅家を安置(お)けり。此を板来の駅と謂ふ」
   この板来駅家(いたこのうまや)は常陸国国府(現石岡)から鹿島までの官道として馬を常駐した駅として利用されたが、弘仁6年(815年)12月22日に廃止された。この駅家のあった場所は旧板来村または旧辻村(津知村)と考えられており、現在、潮来にある長勝寺の境内に「板来駅家の跡」の碑が置かれている。ただ実際は辻(津知)村であった可能性も高いと思われる。
 2) 「建借間命(たけかしまのみこと)、騎士をして堡(とりで)を閇(と)ぢしめ、夜より襲ひ撃ちて、尽に種族を囚へ、一時に焚き滅しき。此の時、痛く殺すと言ひし所は、今、伊多久(いたく)の郷と謂ひ」
 このように常陸国風土記では、ヤマト朝廷の東国進出時に、この潮来周辺にいた現地人(国栖:くず)の夜尺斯(やさかし)、夜筑斯(やつくし)という2人の種族が強力に抵抗したため、これを策略をもっておびき出して皆殺し(焼き殺し)にしたという言い伝えから、痛く殺したということで地名が「伊多久(板来)」となったとしています。

<和名抄>(平安時代の辞書)【坂来郷】(板来郷の間違いか)
 「坂来郷」とあり、読みは書かれていない。 新編常陸誌はこの「坂来」は「板来」の書き間違いだとしている。

<南北朝時代>【いたく】
 応安年間頃の海夫注文に「いたくの津」とある。

<江戸時代>
 ・水戸領郷高帳(1635年)、元禄郷帳(1700~1702年):【板久村】
 ・水戸光圀による改名(1698年)【潮来】
 元禄11年(1698)、鹿島に「潮宮」があり、常陸の方言で「潮」を「いた」と読むことに興味をおぼえたため、「板来」⇒「潮来」に改名した。

これによれば、江戸時代初期頃は「板久村」と書かれており、1700年頃から正式村名が「潮来」に変わっていったと考えられます。
また光圀が気になった名前という「潮宮(いたみや))」は、鹿島神宮の摂社に「潮宮」があり、神社としては正暦3年(992年)に小美玉市倉数地区に遷祀したとされ、現在もこの倉数地区に残されています。

現在の鹿島神宮にはの境外末社に潮宮があり、この潮宮(いたのみや)を祀っている「潮社(いたのやしろ)」が高天原地区にあります。

さてここまでは判っている内容で、地名由来も常陸国風土記に書かれている「痛く殺したので板久となった」というのが本当だろうと思ってしまいます。
しかし、これもあくまでも風土記の書かれた8世紀初頭の地域に伝わる伝承です。

では実際はきっともっと違った意味合いがあるのだと思われます。
「イタコ」「イタク」などとの発音にあった解釈を探すと、やはり地形により古アイヌ語になりそうです。
・「痛んだ場所=痛(イタ)・処(ク) という地形から「イタク」と呼ばれた。
・古代は伊良虞(いらご)と呼ばれ、このイラゴが「イタコ」に変化した。 イラゴ、イラコとは「粗い砂粒」を示すのではないかと言う。

いっぽう「久」と「来」が両方出てきますが、どうもこれは古代の地名には「久」と「来」は同じような発音だったのかもしれません。
恐らく「来」は「コ」ではなく「ク」と発音していたものと考えられます。「板来=いたく」です。

常陸国風土記の信太郡のところに、「碓氷から西に行くと高来(たかく)の里がある」という記述があります。この「高来(たかく)」は現在の阿見町の「竹来(たかく)」とみなされています。「来=ク」です。
この考え方だと伊良虞(いらご)説は「く」とは読みづらいですので、地名由来としては考えにくいですね。

では実際はというとよくわかりません。
青森県恐山のイタコという死んだ人を呼び寄せる(口寄せ)という巫女がおりますが、この言葉の由来としてはアイヌ語のイタクが「語る」という意味であり、この「イタク」が「イタコ」になったとする説があるといいます。

こちらもイタクがイタコになっていますので、同じ意味合いがあるのかもしれません。
ただ、これを裏付けるものはありません。


茨城の難読地名 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2018/08/05 06:32
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