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茨城の難読地名(その56)-南指原

難読地名56

シリーズ1回目からは ⇒ こちら 

南指原 【なじわら】 笠間市

この茨城の難読地名も56回目だが、地名数では100を超えてしまった。
まだまだたくさんあるはずだが、限もないのでそろそろ打ち止めとしよう。

取り上げてきた地名は現在の郵便番号簿に載っている地名にほとんど限定したが、昔の小字(こあざ)地名はこれにはなく、大字に限定されるし、それも住所変更などが時々されていて無味乾燥な「佳名」とかいわれる地名ばかりになってしまってきた。
私のいる「若松町」などというのはまさにその典型だ。
江戸時代に佳名にしようということになり、長法寺町から変更された。

今回の「南指原」【なじはら】は先日ブロ友から紹介された地名だが、これは大字地名ではなく小字地名なのだと思う。
しかし、AKB48ブームがなかなか去らずにいまだテレビを賑わせているが、「指原(さしはら)莉乃」という名前が有名になり、この指原の名前由来もネットでもにぎわっている。
それによると、この名前の方は大分県大分市丹川(あかがわ)地区にほとんど限定されたお名前だそうで、「指原」「佐志原」というお名前の方が結構おられるのだそうだ。
この「丹川(あかがわ)」というのも読めないが、これは地名に多く登場する「丹生(にう)」などが赤色の鉱物が採れる場所をさしているので「あか」になったものだと思う。丹生については以前「羽生」のところで書いた。

「さしはら」という名前が「指原」「佐志原」と違った漢字で書かれるということはあまり漢字そのものには意味はなさそうだ。

「南指原」を「なじわら」と読ませるのは「「みなみさしはら」が「なじわら」となったと解釈するのが普通だろう。
やはり「指原」(さしはら)の南に位置するのだとすると、北側に「指原」(さしはら)地名があるかというとそれは現在は存在していない。


「さし」を調べると、古代朝鮮語で「城」のことであったり、また「焼畑」「開墾するために原野を焼畑すること」などを意味しているという。 

「武蔵=ムサシ」の語源について色々の説がありますが、柳田國男は「雑木林を蒸(ム)して 焼畑農地(サシ)を作るに由来している」としています。またム=産むで、佐志(焼畑)で開墾することを意味しているとしています。

また、サーシ(日向地、傾斜地)より出た地形語とみることもできそうです。
これだと南指原は南向きの日当たりのよい傾斜地となり、現在の地形に近い。

また、茨城県のこの地方に集中する「佐志能神社」などの名前にもどこか共通する。
「佐志能」=さしの、さしのうも由来はどこかで共通するのかもしれないが、大和朝廷の東国進出時に豊城入彦命(とよきいりひこのみこと)が東山道から北へ進出して、その子孫や部下たちが各地でその地の開拓に努めます。
その中に「佐白公」という名前が出てくる。
これが、佐白山やそこに祀られた神社「佐志能」になったりしていると思われる。

サシ=指=佐志 を焼畑で荒地を開拓したという意味だと解釈して各地の地名を見てみるとかなり納得できるところも多いように思われます。

地図を確認してみると、南指原は稲田に近い場所で、棚田が広がり、「ホタルの里」としてもしられる里山です。
直ぐ西に吾国山がそびえ、北は低い山ですが「三峰山」などの古くからの信仰の山もあります。


<佐志の付く地名>
埼玉県狭山市加佐志(かざし)
佐賀県唐津市佐志(さし)
長崎県平戸市大佐志町(さしちょう)
長崎県対馬市豊玉町佐志賀(さしか)
大分県臼杵市佐志生(さしう)

<指=サシ、サジの地名>
宮城県牡鹿郡女川町指ケ浜(さしのはま)
茨城県石岡市金指(かなさし)
茨城県北茨城市中郷町小野矢指(おのやさし)
茨城県猿島郡五霞町小手指(こてさし)
埼玉県さいたま市西区指扇(さしおおぎ)゙
埼玉県さいたま市西区指扇領辻(さしおおぎりょうつじ)
埼玉県さいたま市西区指扇領別所 (さしおおぎりょうべっしょ)
埼玉県所沢市小手指台(こてさしだい)
埼玉県所沢市小手指町(こてさしちょう)
埼玉県所沢市小手指南(こてさしみなみ)
埼玉県所沢市小手指元町(こてさしもとまち)
神奈川県横浜市旭区矢指町(やさしちょう)
新潟県見附市指出町(さしでまち)
新潟県村上市指合(さしあわせ)
新潟県糸魚川市指塩(さししお)
石川県小松市江指町(えさしまち)
石川県かほく市指江(さしえ)
静岡県浜松市北区引佐町金指(かなさし)
静岡県島田市旗指(はっさし)
京都府京都市中京区指物町(さしものちょう)
京都府京都市中京区指物屋町(さしものやちょう)
京都府京都市伏見区指物町(さしものちょう)
兵庫県美方郡新温泉町指杭(さしくい)
奈良県天理市指柳町(さしやなぎちょう)
岡山県美作市日指(ひさし)
長崎県佐世保市指方町(さしかたちょう)
長崎県雲仙市小浜町北木指(きたきさき)
長崎県雲仙市小浜町南木指(みなみきさし)
大分県中津市餌指町 オオイタケンナカツシエサシマチ
大分県杵築市山香町日指(ひさし)

このように「指物(さしもの):くぎを使わずに木を組み合わせてつくった道具箱など」「指物職人」に由来したと思われる地名も多いが、結構由来が気になる名前も多い。
あと、福島県会津若松市に「神指城(こうざしじょう)」というお城がある。地名も「神指=こうざし」だ。

茨城の難読地名 | コメント(3) | トラックバック(0) | 2018/08/08 07:01
コメント
No title
こんにちは。
さっそく調べていただきありがとうございます。
以前から思っていましたが、地名を調べるのは難しいけれど面白いですね。私もこれから気にしていきたいと思います。
troyさま
> さっそく調べていただきありがとうございます。
> 以前から思っていましたが、地名を調べるのは難しいけれど面白いですね。私もこれから気にしていきたいと思います。

地名はこれと言った正解がないので難しいですね。
でもいろいろ想像が膨らんで面白いです。
このネタもそろそろ終わり。
まとめようと思っていますが、こんなことも残しておいてもいいかなと・・・。

Utamさま
拍手コメントありがとうございます。

地名というのは多くに人が研究されたりしていますが、正解といえるものは無いに等しいですね。学者でもないので興味に任せて調べたものを残しておきたくなりました。
しかし、ある程度掻いたのでそろそろ終わりにしたいと思っています。

> これはおもしろい点を発掘されました。そのうち本にできますね。 いろいろ民俗学の本とか読まなくてはならないので凄く勉強されていると思います。地名というのは難しいのですが、それなりに意味に興味はあります。続けて下さい。

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