茨城の難読地名(その63)-鵠戸、生子

シリーズ1回目からは ⇒ こちら
鵠戸 【くぐいど】 坂東市(旧岩井市)
生子 【おいご】 坂東市(旧猿島町)
旧岩井市北部から堺町南部にかけて「鵠戸沼(くぐいどぬま)」という沼がかつて存在していました。
この沼は江戸時代初期に家康の命により、利根川の流れを銚子の方に付け替えた時に、猿島台地(さしまだいち)の侵食された谷間が土砂で埋まり、川が沼となって残っていたものです。ただ深さも1~2m位と浅く、周囲には低地が広がっていました。
明治42年に利根川左岸の堤防の工事が進み、今まで3年に1回ほどの頻度で洪水が起きていて、水田として適さなかった地であったが、この沼及びその周辺は水田として干拓されて、昭和24年に沼はなくなった。
鵠戸(くぐいど)はこの鵠戸沼と利根川の間の台地に位置し、戦国時代の地名に「くゝいと」と書かれている。
鵠(くぐい)とは、古語で白鳥のことで、地名の由来もこの沼に白鳥が飛来して群集するため「鵠戸沼(くくいどぬま)」と呼ばれ、沼の沿岸にある村ということで「鵠戸村」となったという。
近くに縄文時代の「鵠戸遺跡」や古墳時代の「仙入久保古墳群」などがあり、古くから人が暮らしていたという。
一方「生子(おいご)」は、この鵠戸沼(今は水田)の枝ヤト(谷戸)が入り込んだ位置にあり、利根川と鬼怒川の間を流れる「西仁連川(にしにづれがわ)」の右岸にあり、縄文・弥生・古墳時代の遺跡が点在している。
地名も「生子村」が江戸初期の1612年の書にすでに見られ、18世紀初期の享保年間に東側に「生子新田(おいごしんでん)」が開拓されています。
「生」の字を「オイ」と読むのは「相生(あいおい)」などでも使われますので、それほど違和感は感じませんが、素直には読めない地名かもしれません。「相生」の地名はほとんどの場合に、2つのものが合わさる(川の合流、村の合併など)所につけられることが多いようです。
このオイ=生についてはアイヌ語説が当てはまりそうです。
北海道に「若生=わっかおい」という地名があります。このワッカ=水で、オイ=場所の意味と言われています。
ですから「生=オイ」は場所を表したり、また何かが生まれるところというような意味と解釈できそうです。
しかし、「子=ご=こ」はどんな意味があるのでしょうか。現在は子供などに使われますが、古代は人のことをコと呼ぶことが多いようです。
卑弥呼のコなども子供ではないです。
鹿嶋市にある「子生(こなじ)」があり以前に紹介しましたが、こちらは字を逆さにした「生子」と書いて「おいご」ですから、地名もなかなか読めないものが多いですね。
<生子のつく地名>
茨城県坂東市生子(おいご)
茨城県坂東市生子新田(おいごしんでん)
福井県大野市下若生子(ししもわかご)
兵庫県南あわじ市賀集生子(かしゅうせいご)
奈良県五條市生子町(おぶすちょう)
また栃木県鹿沼市に生子神社(いきこじんじゃ)という神社があり、9月に行われる幼児の泣き相撲が有名です。
こちらの名前の由来は、当初は籾山明神と言っていたが、天文18年(1549年)に、氏子の一子が痘瘡により死去し、嘆き悲しんだ夫妻が明神に我が子の蘇生を祈願した後、境内に湧くミタラセの池で水行を行ったところ、3日後に願いが叶い子供が蘇生したという。
これ以来神社の名前が「生子(いきこ)神社」と呼ばれるようになったと伝えられています。
<生=オイの地名 但し相生=アイオイは多数(100件以上)あるため除く>
北海道伊達市若生町(わっかおいちょう)
北海道石狩市若生町(わかおいちょう)
北海道二海郡八雲町野田生(のだおい)
北海道網走郡美幌町駒生(こまおい)
青森県十和田市稲生町(いなおいちょう)
岩手県下閉伊郡普代村芦生(あしおい)
山形県鶴岡市稲生(いなおい)
山形県酒田市生石(おいし)
山形県上山市金生(かなおい)
茨城県坂東市生子(おいご)
茨城県坂東市生子新田(おいごしんでん)
群馬県高崎市箕郷町生原(おいばら)
埼玉県加須市生出(おいで)
埼玉県鴻巣市生出塚(おいねづか)
千葉県千葉市若葉区愛生町(あいおいちょう)
千葉県銚子市新生町(あらおいちょう)
千葉県東金市荒生(あらおい)
千葉県旭市高生(たかおい)
千葉県市原市新生(あらおい)
千葉県匝瑳市生尾(おいお)
千葉県山武郡九十九里町荒生(あらおい)
千葉県山武郡九十九里町田中荒生(たなかあらおい)
石川県小松市松生町(まつおい)
岐阜県高山市上宝町芋生茂(おいも)
奈良県桜井市生田(おいだ)
和歌山県有田郡有田川町生石(おいし)
徳島県三好市東祖谷菅生(すげおい)
高知県四万十市生ノ川 (おいのかわ)
高知県四万十市西土佐長生(ながおい)
福岡県京都郡みやこ町犀川生立(さいがわおいたつ)
熊本県合志市合生(あいおい)
コメント