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日本語と縄文語(9) 紅(くれない)と鬼無里(きなさ)

今回はアイヌ語から縄文語を探してみたいと思います。

アイヌ語については「アイヌ民族博物館アイヌ語アーカイブ(こちら)から探してみます。

ただし、こちらのアイヌ民族博物館(北海道白老町)は昨年秋にいったん閉園となりましたが、この5月末にアイヌ文化発信拠点として再オープン予定です。
アイヌ語の資料検索などのHPは現在も利用可能です。

では日本語で「赤い」と検索してみます。

 húre フレ 赤い
 húreno フレノ とても赤い、 まっ赤である
 etuhure あかはな(赤鼻)etu-hure〔e-tú-Fu-reエとぅフレ〕[etu(鼻)+hure(赤い)]

などと出てくる。

そこでこの 赤い=hure フレから思いつくのは「クレナイ=紅」である。

1、【紅(くれない)】 :  【hure 赤い 赤くなる】+【ay イラクサ、矢、トゲ】

クレアイ ⇒ クレナイ

benibana.jpg
(紅花=ベニバナ=末摘花=クレナイ=紅藍)

【kurenawi クレナヰ】 : 葉の先に強いトゲ(ay)がある植物で、夏にアザミに似た紅色の花が咲く。
それを摘んで染料とした。
万葉集には「末摘花(すえつむはな)」と呼び、源氏物語にも鼻の赤い鼻摘まみ女として出てくる。
しかし、この末摘花は一般に「紅花 べにばな」と呼ばれ、山形県の特産になっている。
山形県に紅花が入ってきたのは古く、エジプト・地中海からシルクロードを経て、飛鳥時代に山形へ渡ってきたと言われています。
また、朝鮮半島から紅染技術を伴って日本に伝来したとも言われています。

この紅花のことを「クレナイ」とも言っているのです。

この染料の出す紅色も「クレナイ」なのです。
そのクレナイの言葉がアイヌ語から理解できるのですから縄文語なのでしょう。

クレナイが 【hure 赤い 赤くなる】+【ay イラクサ、矢、トゲ】であるというのは、平安時代の辞書である和名抄には「紅藍」があり、紅藍(呉藍)の読みは「久礼之阿井 クレノアイ」となっています。

紅(べに)のことを「クレ」と読むのはこのように現在のアイヌ語の 【hure フレ 赤い】 から説明ができるのです。

その他に 【hure 赤い】が語源と思われる言葉には、【熟れる、熟して赤くなる】・・・ureる はhureのhがとれたものと考えれれます。
満州語で赤をfulaといい、ホウセンカ(鳳仙花)を福島、山口、九州では「ツマグレ」という。
これはホウセンカの赤い花びらで爪を紅く染めるためだ。
また、新潟古志郡、大分北海部では「ツマクレナイ」という。
黒く染めるのは島根鹿足、九州などでは「ツマグロ」という。

また各地の地名で「丹生(にう)」という地名があります。
この説明には紅い染料となった鉱物が採れた所とあります。
山形県丹生川の上流に「紅内(くれない)」という地名があり、これは

【hure 紅い】+【nay 川】で紅い川となり、丹生川の古名(縄文語)であった可能性があります。


さて、この「日本語になった縄文語」の本にもうひとつ面白いことが書かれていました。

それは、長野県戸隠の「鬼無里(キナサ)」の地名由来です。

水芭蕉の里として有名になっていますが、ここに謡曲や能の「紅葉狩」の話として伝わっています。

<紅葉伝説(もみじでんせつ)> wikipedia より

 937年(承平7年)のこと、 子供に恵まれなかった会津の夫婦(笹丸・菊世)が 第六天の魔王に祈った甲斐があり、 女児を得、呉葉(くれは)と名付けた。
才色兼備の呉葉は豪農の息子に強引に結婚を迫られた。
呉葉は秘術によって自分そっくりの美女を生み出し、 これを身代わりに結婚させた。

偽呉葉と豪農の息子はしばらくは睦まじく暮らしたが、 ある日偽呉葉は糸の雲に乗って消え、 その時既に呉葉の家族も逃亡していた。
呉葉と両親は京に上った。
ここでは呉葉(くれは)は紅葉(もみじ)と名乗り、 初め琴を教えていたが、源経基の目にとまり、 腰元となりやがて局となった。
紅葉は経基の子供を妊娠するが、 その頃御台所が懸かっていた病の原因が 紅葉の呪いであると比叡山の高僧に看破され、 結局経基は紅葉を信州戸隠に追放することにした。

956年(天暦10年)秋、まさに紅葉の時期に、 紅葉は水無瀬(鬼無里)に辿り着いた。
経基の子を宿し京の文物に通じ、 しかも美人である紅葉は村びと達に尊ばれはしたものの、 やはり恋しいのは都の暮らしである。
経基に因んで息子に経若丸と名付け、 また村びとも村の各所に京にゆかりの地名を付けた。
これらの地名は現在でも鬼無里の地に残っている。

だが、我が身を思うと京での栄華は遥かに遠い。
このため次第に紅葉の心は荒み、京に上るための軍資金を集めようと、 一党を率いて戸隠山に籠り、 夜な夜な他の村を荒しに出るようになる。
この噂は戸隠の鬼女として京にまで伝わった。
ここに平維茂が鬼女討伐を任ぜられ、 笹平(ささだいら)に陣を構え出撃したものの、 紅葉の妖術に阻まれさんざんな目にあう。 かくなる上は神仏に縋る他なしと、観音に参る事17日、 ついに夢枕に現れた白髪の老僧から降魔の剣を授かる。
今度こそ鬼女を伐つべしと意気上がる維茂軍の前に、 流石の紅葉も敗れ、 維茂が振る神剣の一撃に首を跳ねられることとなった。

呉葉=紅葉33歳の晩秋であった。

この話しから「鬼のいない里=鬼無里(きなさ)」という地名になったというものだ。

ここで、注目すべきは紅葉(もみじ)=呉葉(くれは 幼少名)で、上に書いた「紅藍=呉藍(クレアイ、クレノアイ)」に通じるのだ。


また読みの【キナサ】 = 【kina 草】+【sar 湿原】ではないかというのだ。

また鬼無(キナシ)=【kina 草】+【us ~が群生する】+【i 所】 からこの字が充てられたのではないかという。

佐渡では草のことを「キナ」と呼ぶそうだ。

このキナというのは 良く焦げたときに「キナくさい」と使う。

現在の国語辞典などを引いても「きな=布」などの意味は出てくるが、「きな臭い」は「布や紙が燃える時の匂い」ではないかということも言われるようだが正確にはわかっていない。

もしこの語源が縄文語で「キナ=草」であるということも可能性があるだろう。

なかなか今まで地名の説明が良くできていないところを、かなり調べて解読されている。

これがすべて正解ともいえないが、言語学で解明できていない言葉の一つの解釈としては、この縄文語説もかなりユニークで説得力もあると思う。

mizubashou.png
奥裾花自然園の水芭蕉
(鬼無里観光振興会)

水芭蕉の白い根は熊の好物と言われている。

そのため、アイヌ語で【水芭蕉=iso・kina 熊の草】という。

現在一般的に使われる「紅葉狩り(もみじがり)」が、裏にこのような紅葉=鬼 を狩った話が潜んでいるとすれば少し怖い。

ただ一般的には 昔の貴族が鷹狩りなどで、動物を狩ったものから、次第に獲物を狩ることがなくなり、柿狩り、梨狩り、イチゴ狩りなどの果物を狩るようになったというのと同義で、紅葉を狩るわけではないが愛でて楽しむ意味で使われ出したというようだ。

ただそれまでもこの鬼女=紅葉 を狩るという「紅葉狩り」の言葉は歌舞伎などを通じて広まっており、言葉は人々の中に親しまれた言葉だったと思われる。

最近の若者世代の中に、紅葉狩りを紅葉の葉をたくさん採るような意味にとらえる人も出始めたそうだ。
これもまた怖い。


今までの「日本語と縄文語」を1から読みたい人は ⇒ こちらから


日本語と縄文語 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2020/05/10 05:23
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