千葉の難読地名(47) 猫実
≪猫実 ねこざね≫ 浦安市

≪猫実 ねこざね≫ 浦安市
室町期には「猫真」とも書いた。旧江戸川河口の三角州である。
江戸期から「猫実村」となり、江戸初期には塩業が行われていたが、寛永6年()には塩田は荒廃して、塩浜年貢が免除となった。(角川 日本地名大辞典)
猫実村の塩浜は寛永期には荒廃し荒浜になってしまい、その跡は農民の入会利用を禁じた原野(立野)になり、百姓持ちの葭野になったと「塩浜由来書」にある。(総研大文化科学研究 第10号(2014))
歌川広重による「名所江戸百景」には「根古ざね」と書かれている。
地名由来としては、水害に何回も襲われ、特に鎌倉時代に大津波の被害を受けた。
そのため、豊受神社付近に堤防を築き、そこに大きな松の木を植えた。
その松の根を津波が越すことがない様に「根超さね」と言ったことが由来という(浦安町誌)
ただ、これも言い伝えですので、もう少し違った解釈があっても良いでしょう。
もともと「ネコザネ」という地名があって、このいわれが後からついたと解釈した方が良いと思います。
少し全国の地名を調べてみたいと思います。
まず、「猫」のつく地名を調べてみましょう。
<「猫」が付く地名>
(猫渕、猫川など)
宮城県気仙沼市松崎猫渕 まつざきねこぶち
福島県福島市猫渕 ねこぶち
福島県伊達市保原町西猫川 にしねこがわ
福島県伊達市保原町東猫川 ひがしねこがわ
静岡県富士宮市猫沢 ねこざわ
(猫石、猫山、猫口、猫塚など)
福島県耶麻郡猪苗代町猫石山 ねこいしやま
新潟県阿賀野市猫山 ねこやま
福井県福井市猫瀬町 ねこせちょう
滋賀県蒲生郡日野町猫田 ねこだ
滋賀県長浜市湖北町猫口 ねこぐち
京都府京都市西京区山田猫塚町 ねこつかちょう
新潟県長岡市猫興野 ねこごうや
(猫屋)
山形県新庄市十日町猫屋敷 ねこやしき (青森県、岩手県、山形県、秋田県にも小字名である)
広島県広島市中区猫屋町 ねこやちょう
(その他)
福島県石川郡石川町猫啼 ねこなき
茨城県筑西市猫島 ねこじま
茨城県坂東市猫実 ねこざね
石川県金沢市大桑町猫シタイ ねこのしたい
愛知県名古屋市千種区猫洞通 ねこがほらとおり
どうですか、これらの地名を一つ一つ調べるのも大変ですがなんとなくイメージは統一されそうです。
全体をざっと見渡しても動物のネコから地名になったものはあまりなさそうです。
では日本でネコを飼うことがなされたのはいつ頃からなのでしょうか。
それが意外に古そうなのです。
平安時代の源氏物語絵巻にも猫がペットとして描かれていますし、説話集である日本霊異記にも猫が登場します。
しかし、もっと前から家ネコがいたらしいとの記録もあります。
壱岐島のカラカミ遺跡からは家ネコらしい猫の骨が見つかっています。
まあ一般的に飼われだしたのは、江戸の中期ころからではないでしょうか?
養蚕が盛んになると、鼠を捕ってくれる猫が崇拝され、神社などでも祀られます。
このため、猫という漢字は意外と古くから使われていたと思われますが、戦国期以前からある地名として「猫」とつくのは、動物の猫(山猫を含む)との解釈はあまり現実的でありません。
1) ね=根 と解釈してもよさそうなのには
・猫興野(ねこごうや)・・・根を掘り起こして開拓をした土地?
・猫屋町(ねこやちょう)、猫屋敷(ねこやしき)・・・根小屋(城のまわりにできた家臣たちの住む場所)?
2) アイヌ語(古代語)の【nay 川、沢】+【car 口、入口】 あたりから、川や沢の入口ではないか?
・猫渕 ・猫川 など
3) 仁古(にこ)地名と同類
・猫田=仁古田 と同じか?
にこ=細かな砂 または古代語・アイヌ語の【nikor】・・湾状に囲まれた場所、ヒダ状の場所
(溜池のあったような場所か?)
さて、猫啼(ねこなき)温泉 などという地名もありますが、これも恐らく地形語と考えられますが、次のような話も伝わっていました。
「和泉式部(平安中期の歌人)が飼っていた猫が怪我をして泣きながら行方をくらました。和泉式部が猫を探しにいくと温泉につかっていて傷口をなめており、傷口はみるみる治った。」
また 「猫シタイ(ねこのしたい)」という金沢の地名ですが、殆んど集落もない山の中で、「猫額」という字名も昔あるところから「猫額=ねこのひたい」となり、「ねこのしたい」となったようです。猫の額ほどの耕作地という意味でしょうか。
さて、話は戻って、千葉県浦安市の「猫実(ねこざね)」ですが、同じ地名が茨城県坂東市にあります。
ここは昔、下総国の領域でした。菅生沼に注ぐ入江の右岸に位置する。東はかつての飯沼に臨み、入江が谷津田となっている。とあります。
するとこちらは アイヌ語(古代語)で【naycar = 沢の口】のような意味合い、または仁古(にこ)湾のように囲まれた地?などではないかと思います。
さて、後ろの「実(ざね)」ですが、これもかなり昔から人物の名前に使われてきています。
真=実=ざね ですので各地の地名を見てみましょう。
<実、真 ざね>地名
石川県鳳珠郡能登町清真 きよざね
岐阜県飛騨市古川町末真 すえざね
愛知県あま市七宝町徳実 とくざね
兵庫県たつの市誉田町長真 ながざね
広島県東広島市西条町助実 すけざね
徳島県三好市山城町重実 しげざね
徳島県名西郡石井町浦庄(国実) くにざね
大分県中津市山国町守実 もりざね
どうですか? 人の名前にも使えそうな地名ばかりですね。
【真・実】 という2つの漢字も 同じ<ざね>です。
ざね・・・曾禰(曽根)=そね から来ているのではないかと言われていますが、この地名は
「河川氾濫があった場所、またその結果自然堤防が形成された場所」
と一般的には言われています。この浦安市の猫実地名にはぴったりします。
ただ、そのほかにアイヌ語(古代語) 【sone 本当の、確実に】などからかもしれません。
千葉の地名シリーズ最初から読むには ⇒ こちらから

≪猫実 ねこざね≫ 浦安市
室町期には「猫真」とも書いた。旧江戸川河口の三角州である。
江戸期から「猫実村」となり、江戸初期には塩業が行われていたが、寛永6年()には塩田は荒廃して、塩浜年貢が免除となった。(角川 日本地名大辞典)
猫実村の塩浜は寛永期には荒廃し荒浜になってしまい、その跡は農民の入会利用を禁じた原野(立野)になり、百姓持ちの葭野になったと「塩浜由来書」にある。(総研大文化科学研究 第10号(2014))
歌川広重による「名所江戸百景」には「根古ざね」と書かれている。
地名由来としては、水害に何回も襲われ、特に鎌倉時代に大津波の被害を受けた。
そのため、豊受神社付近に堤防を築き、そこに大きな松の木を植えた。
その松の根を津波が越すことがない様に「根超さね」と言ったことが由来という(浦安町誌)
ただ、これも言い伝えですので、もう少し違った解釈があっても良いでしょう。
もともと「ネコザネ」という地名があって、このいわれが後からついたと解釈した方が良いと思います。
少し全国の地名を調べてみたいと思います。
まず、「猫」のつく地名を調べてみましょう。
<「猫」が付く地名>
(猫渕、猫川など)
宮城県気仙沼市松崎猫渕 まつざきねこぶち
福島県福島市猫渕 ねこぶち
福島県伊達市保原町西猫川 にしねこがわ
福島県伊達市保原町東猫川 ひがしねこがわ
静岡県富士宮市猫沢 ねこざわ
(猫石、猫山、猫口、猫塚など)
福島県耶麻郡猪苗代町猫石山 ねこいしやま
新潟県阿賀野市猫山 ねこやま
福井県福井市猫瀬町 ねこせちょう
滋賀県蒲生郡日野町猫田 ねこだ
滋賀県長浜市湖北町猫口 ねこぐち
京都府京都市西京区山田猫塚町 ねこつかちょう
新潟県長岡市猫興野 ねこごうや
(猫屋)
山形県新庄市十日町猫屋敷 ねこやしき (青森県、岩手県、山形県、秋田県にも小字名である)
広島県広島市中区猫屋町 ねこやちょう
(その他)
福島県石川郡石川町猫啼 ねこなき
茨城県筑西市猫島 ねこじま
茨城県坂東市猫実 ねこざね
石川県金沢市大桑町猫シタイ ねこのしたい
愛知県名古屋市千種区猫洞通 ねこがほらとおり
どうですか、これらの地名を一つ一つ調べるのも大変ですがなんとなくイメージは統一されそうです。
全体をざっと見渡しても動物のネコから地名になったものはあまりなさそうです。
では日本でネコを飼うことがなされたのはいつ頃からなのでしょうか。
それが意外に古そうなのです。
平安時代の源氏物語絵巻にも猫がペットとして描かれていますし、説話集である日本霊異記にも猫が登場します。
しかし、もっと前から家ネコがいたらしいとの記録もあります。
壱岐島のカラカミ遺跡からは家ネコらしい猫の骨が見つかっています。
まあ一般的に飼われだしたのは、江戸の中期ころからではないでしょうか?
養蚕が盛んになると、鼠を捕ってくれる猫が崇拝され、神社などでも祀られます。
このため、猫という漢字は意外と古くから使われていたと思われますが、戦国期以前からある地名として「猫」とつくのは、動物の猫(山猫を含む)との解釈はあまり現実的でありません。
1) ね=根 と解釈してもよさそうなのには
・猫興野(ねこごうや)・・・根を掘り起こして開拓をした土地?
・猫屋町(ねこやちょう)、猫屋敷(ねこやしき)・・・根小屋(城のまわりにできた家臣たちの住む場所)?
2) アイヌ語(古代語)の【nay 川、沢】+【car 口、入口】 あたりから、川や沢の入口ではないか?
・猫渕 ・猫川 など
3) 仁古(にこ)地名と同類
・猫田=仁古田 と同じか?
にこ=細かな砂 または古代語・アイヌ語の【nikor】・・湾状に囲まれた場所、ヒダ状の場所
(溜池のあったような場所か?)
さて、猫啼(ねこなき)温泉 などという地名もありますが、これも恐らく地形語と考えられますが、次のような話も伝わっていました。
「和泉式部(平安中期の歌人)が飼っていた猫が怪我をして泣きながら行方をくらました。和泉式部が猫を探しにいくと温泉につかっていて傷口をなめており、傷口はみるみる治った。」
また 「猫シタイ(ねこのしたい)」という金沢の地名ですが、殆んど集落もない山の中で、「猫額」という字名も昔あるところから「猫額=ねこのひたい」となり、「ねこのしたい」となったようです。猫の額ほどの耕作地という意味でしょうか。
さて、話は戻って、千葉県浦安市の「猫実(ねこざね)」ですが、同じ地名が茨城県坂東市にあります。
ここは昔、下総国の領域でした。菅生沼に注ぐ入江の右岸に位置する。東はかつての飯沼に臨み、入江が谷津田となっている。とあります。
するとこちらは アイヌ語(古代語)で【naycar = 沢の口】のような意味合い、または仁古(にこ)湾のように囲まれた地?などではないかと思います。
さて、後ろの「実(ざね)」ですが、これもかなり昔から人物の名前に使われてきています。
真=実=ざね ですので各地の地名を見てみましょう。
<実、真 ざね>地名
石川県鳳珠郡能登町清真 きよざね
岐阜県飛騨市古川町末真 すえざね
愛知県あま市七宝町徳実 とくざね
兵庫県たつの市誉田町長真 ながざね
広島県東広島市西条町助実 すけざね
徳島県三好市山城町重実 しげざね
徳島県名西郡石井町浦庄(国実) くにざね
大分県中津市山国町守実 もりざね
どうですか? 人の名前にも使えそうな地名ばかりですね。
【真・実】 という2つの漢字も 同じ<ざね>です。
ざね・・・曾禰(曽根)=そね から来ているのではないかと言われていますが、この地名は
「河川氾濫があった場所、またその結果自然堤防が形成された場所」
と一般的には言われています。この浦安市の猫実地名にはぴったりします。
ただ、そのほかにアイヌ語(古代語) 【sone 本当の、確実に】などからかもしれません。
千葉の地名シリーズ最初から読むには ⇒ こちらから
でも何故猫か? などと考えていくと結構面白いです。
近所の地名でも最初は読めないことありますよね。