fc2ブログ

大連のうた

 先日まだ緊急事態宣言が出される前のこと、笠間の方のフリーマーケットで妻が変った絵本を買ったと帰って来た。

おとうさんの絵本 「大連のうた」という本である。

本はハードカバーの上製本にボックスの紙カバーに入っていた。
このボックスカバーは薄汚れて、かなりボロボロだ。

P1160228s.jpg

P1160229s.jpg

しかし、中身は全く読まれた形跡もないほどきれいなままである。

妻の父(私の義父)は、大連、満州国で終戦時に旧ソ連の捕虜になり、シベリア抑留となり、日本に帰れたのは最後の頃の昭和25年頃となったと聞いている。
帰国後に妻が生まれた事になる。

義父から大連の話しは時々聞いていたらしく、本のタイトルをみて衝動的に買い求めたという。

私を含め、妻もこのシベリア抑留の頃の話は、義父は殆んど話したがらず、詳しいことは聞いていない。
昭和20年8月の日本の敗戦により約60万人の日本兵が本国へ帰れず、シベリアに連れて行かれて長い年月過酷な労働をさせられたこのソ連(ロシア)の非人道的な扱いにより、抑留者の約1割(約6万人)が現地で亡くなったと言う。

また、ソ連共産党の思想的な強制も受け、共産主義に変わった(変えられた)人間も多くいたという。

さて、この絵本は、昭和7年に大連で生れて、戦後の15歳のときまで、大連で育った「川崎忠昭」さんが、当時を思い出して、町の行事や子供時代の記憶を頼りに、30点ほどの絵を描いて、それに当時の様子を詩(文章)に書いて添えられている。
まさに子供時代を過ごして作者の感性が生き生きとよみがえってくる。
これも、きっかけは自分の子供のために残そうと考えて描かれた本だという。

日本に帰り、電車に乗り、東京「信濃町」などを通る時に、急に大連の「しなのまち」を思い出したという。

本が出版されたのが1978年(昭和53年)。
残念ながら作者の川崎忠昭さんは、その翌年の昭和49年に亡くなられたようだ。

まさに「おとうさんの絵本」なのかもしれない。
久々に感動した本であった。

中の絵や詩は複製、転写などができないため、見たい方は本を買い求めていただくしかないが、なかなか古本で捜してみたが、出ていなかった。
以前の販売記録では定価5800円の本に、倍以上の値段が付いていた。

私も、本を開けて、一気に全部読んでしまった。
とても役に立った。
戦争を知らない現在の人達にも是非手にとって見てもらいたい本だ。

日露戦争で日本が勝利して、大連はロシアから日本の統治下に入った。
そして、太平洋戦争前には大勢の日本人が中国人とともに暮らしていた。
そんな暮らしの様子がよくわかる。

終戦によりロシア軍が町に入ってきた時の様子も・・・。

うん。なかなかよい本にめぐり合えた。・・・・・・

作者の川崎忠昭さんの奥様は、和洋女子大学名誉教授で国文学者の「川崎キヌ子」さん。
時々、この本の原画展などが行われているようだ。



つらつら思うこと | コメント(0) | トラックバック(0) | 2021/01/17 12:21
コメント

管理者のみに表示