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水雲問答(49) 権変を以てことをなし得ること

  これは江戸時代の(長崎)平戸藩の藩主であった松浦静山公が晩年の20年間に毎日書き残した随筆集「甲子夜話(かっしやわ)」に書かれている2人の手紙による問答集を理解しようとする試みです。

雲:白雲山人・板倉綽山(しゃくざん)1785~1820年 上州安中の藩主
水:墨水漁翁・林述斎(じゅっさい):1768~1841年 儒学者で林家(幕府の大学頭)中興の祖
松浦静山・松浦 清 :1760~1841年

水雲問答49

水雲問答(49) 権変を以てことをなし得ること

雲:
 権変を以てことをなし得ること、又時に寄り棄つるべからず。大事ならば一生に一度、又は二度に過(すぐ)べからず。偏なる者にて人服せぬこと多し。多ほく一時のことになくて、跡に残るとのことに用(もちふ)べからずと存候。

(訳)
 その場に応じて臨機応変に事に当ることは、時によっては棄てがたい事でしょう。大事をなす場合には、一生に一度または二度以上はしてはいけないと思います。何度も行えば偏(かたよ)った者となってしまい、人は付いてこない場合が多くなります。この多くは、一時的なことではなく、痕跡が残るようなやり方で使うべきではないと思います。

水:
 古に云ふ権は、ことの軽重をはかり、其の宜(よろしき)を得るを以て権衡の物を量るにすれば、権の当る所則(すなはち)経にことならず候。後世に云ふ権略、権変、権謀、権機の類は、非常の時施す可(べ)くして、平時に行ふ可からず。閣下云(いふ)所の権は、権詐(けんさ)の類なり。古の権は時を択(え)らばず、一二を限るべからず。其(それ)に当りては皆行ふべきことに候。

(訳)
 昔使われていた「権」という言葉は、事の重さ(軽重)をはかり、そしてその良い落としどころを得ることで、この権衡の物を量る(釣り合いをはかる)ようにすれば、権(権力)はいわゆる経(経営)とはなりません。後世に云う「権略(その場に応じた策略)」「権変(臨機応変な手段)」「権謀(はかりごと)」「権機(かりそめ)」などとして使う「権」のたぐいです。これらは非常時に使うもので、平時に使ってはいけません。閣下のおっしゃている権は、「権詐(けんさ:人を欺くはかりごと)」の類であり、古(いにしえ)の権は時代を選ばず、一度二度などとは関係なく、天秤ばかりの分銅の「権」は、物事を行う上で、皆が行うべき事です。

(コメント)
 権が天秤ばかりの分銅の意味である事は、この水運問答の最初の(2)「経国の術と権略」に述べられています。



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水雲問答 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2021/03/29 20:48
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