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水雲問答(52) 謀に精細にして、行に軽率なるべし

  これは江戸時代の(長崎)平戸藩の藩主であった松浦静山公が晩年の20年間に毎日書き残した随筆集「甲子夜話(かっしやわ)」に書かれている2人の手紙による問答集を理解しようとする試みです。

雲:白雲山人・板倉綽山(しゃくざん)1785~1820年 上州安中の藩主
水:墨水漁翁・林述斎(じゅっさい):1768~1841年 儒学者で林家(幕府の大学頭)中興の祖
松浦静山・松浦 清 :1760~1841年

水雲問答52

水雲問答(52) 謀に精細にして、行に軽率なるべし

雲:
古今の人軽率に敗るることを知て、その軽率の益多きことを知らず。精細の益多きことを知て、しかも精細の害甚しきことを知らず。大事をなし出さんとする者は、謀に精細にして、行に軽率なるべし。独り大事のみに非ず。凡ての事斯くの如し。

(訳)
 今も昔も人が軽率であれば失敗することは皆が知っていますが、その軽率が実は益が多いということは知りません。また、詳細(細かなところまで詳しくやる)の益が多いことは知っていますが、この詳細にも害が非常に多いということを知りません。大事をなそうとする者は、謀(はかりごと、計画)は詳細(細かく研究)にして、行動は軽率である(躊躇せずにさっさとやる)べきです。これは大事のことに限ったことではありません。すべてのことに当てはまります。

水:
 軽率の字病(へい)あり。濶略に易(かふ)べし。是は今人頂門の砭針(へんしん)語に候。

(訳)
 (云うことはわかりますが)軽率という字には弊害があります。できれば「濶略(かつりゃく)」(おおまかにやってしまう)と言い換えた方が良いと思います。これは今の時代の人には「頂門の砭針(へんしん)」(頭の上のつぼに刺す針=急所を突いた戒めの言葉)の言葉です。



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水雲問答 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2021/03/31 06:37
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