甲子夜話の面白き世界(第4話)天狗にまつわる話(4)

天狗の記載がありませんが、初期の頃、空から降ってくる「火球」も天狗といわれていたといわれているそうですので、ここに火球に係わる2つの話を載せておきます。
《11》 火毬が降ってきた話し
わが永昌寺の隣りに宗源寺という寺があり、そこの住持(住職)を順道と云う。
肥前佐嘉(佐賀)領の人だという話と聞くが、佐賀では時として天から火毬が降ることがあると。
これを里人は「テンピ」と言っている。(このテンピは天火なるに違いない〉。
火毬は地上に落ちると、地面の上を転がる。
人々はこれを観ると直ぐに集まって後を追う。
そして追う時には念仏を高唱する。
追えば、テンピはまた回転して逃げる様である。
そして郊外まで追って行くと野に転がって行き災いはない。
しかし追わないと人家に転び入り、そこで火を発すると云う。
奇なることである。
(巻之9 〔3〕 ← クリック 元記事)
《12》 火球が天より落ちてきた話し
林子が語った事だが、癸未十月八日の夜の戌刻下りに、西の天から大砲のような響きがして、それが北の方へ行った。
そして直ぐに北の戸を開けて空を見ると、北天に残響が轟いていた。
後に人が話すのを聞くと、あたりを歩いていた人は、そのとき大きな光り物が飛んでいくのを見たという。
また数日隔てて聞いた。
早稲田にちょっとした御家人の住居があり、その玄関辺りに石が落ちて屋根を突き破り、破片が飛び散ったのが、その夜のその時刻だったという。
そういえば、七八年前にもこのようなことがあったな。
これは昼間の話だが、八王子の農家の畑の土に石がめりこんだ。
今回の夜の一件と同じようだ。
今度の破片も同じような石だとそれを見た人は云っている。
昔、星が落ちてきて石になったなどと云うことを聞いたが、これに由来しているのだろう。
七八年前の飛び物は、まさしくわしの身内の者が見ていたのだが、その大きさは四尺(1.2mほど)以上にもなる。
また、赤っぽく、黒っぽく、雲のようで、火焔のようである。
鳴動回転して、中天をものすごい勢いで飛ぶ。
そして走っていく後ろには火の光のようなものがついており、かつ残響を曳くこと二三丈に及んだ。
動きは東北から西方に飛んで行った。
見物人は、はじめのうちは熱心に見入っているが、その後は怖くなって家に逃げかえり、戸を塞いでしまう。
(巻之40 〔5〕 ← クリック 元記事)
以上甲子夜話に記載されていた天狗に纏わる話を4回にわたり12件紹介した。
しかし、これもまだごく一部で、目次を探ると、天狗に関する話題はまだまだたくさん収録されている。(参考)
No 篇数 巻数 番号 目次
1 続 005 003 越後、漂木咄
2 続 012 007 天狗災火を走る
3 続 017 001 落咄百節
4 続 021 009 『車借』の事〔能に見ゆ〕
5 正 006 009 林子、宮嶋にて山禁を犯し瀑雨にあふ事
6 正 009 025 誠拙和尚、南禅寺にて天狗を戒むる事
7 正 023 010 飛脚、箱根山にて怪異に逢ふ事
8 正 023 034 坂本雲四郎、駒嶽に怪を見る事
9 正 030 023 空中に人行を見し話
10 正 034 007 足利時代勧進能并場所の図
11 続 032 004 喜多六平太家伝符大会の面の事
12 続 036 002 原、白隠和尚時蹟『粉引唄』[同]
13 続 055 003 火災詩〔文政十二年三月〕
14 続 066 003 天保二年辛卯観世勧進能のこと並其前と古代の事
15 正 095 002 狼華歓心能
16 正 094 011 天狗〔引『抱朴子』〕
17 正 090 013 古人の短冊
18 三 015 001 就中『石橋』の能、家々其別ある由之事
19 三 017 002 讃州丸亀城主京極家の家老某、女病しとき家長神託のこと
20 三 021 001 豆州談〔江川太郎左衛門、朝川鼎物語。三十一段〕
21 三 050 002 堀田備中奥医某怪死
22 三 058 004 牛車をぎっしゃと唱ること ○水天宮 ○浄海入道の墓 ○二子山
23 三 067 010 大火之とき天狗火を延く話 ○長門の臣愛宕山に登、洛中延焼を見し話并右大火の前妖
24 三 069 006 日光宮登山のとき愛宕山失火の怪語
25 三 070 012 天狗をグヒンと云説并天狗両種ある説 付安覚并梅居士の強記 ○天狗を見し正話
26 三 077 016 足守侯の領、鷲人語を成せし話付評
27 正 073 006 天狗界の噺
28 正 068 001 『丙丁燼余』之一
29 正 065 006 福太郎の図[河童の名]
30 正 064 003 南禅寺守護神
31 正 060 017 天狗〔飛物の名〕
32 正 007 027 上総人足、天狗にとられ帰後の直話
などがあり、今ここでは12件ほど(1/3)を紹介したに過ぎない。
またブログ自体もまだ全体の1/3程度であり、機会があれば残りの物も後から追加してまとめて見たい。
コメント