fc2ブログ

甲子夜話の面白き世界(第8話)蛟(みずち)の話し

甲子夜話の世界第8話

<甲子夜話の面白き世界(第8話)蛟(みずち)の話し>

  蛟(みずち)

わしの小臣の某がある夜に小舟に乗って海釣りをしていた。
その時に月が白く輝き、風は清らかだった。

そして、白岳の方を臨むと、山頂より雲が一帯生じていた。
その雲は白色で綿々していた。
その綿のような雲は、だんだん広がってきて、遂には天を半分覆うようになり、まるで茶碗の様であった。

そして、その傍には、また白く鱗々とした雲が生じてきた。
すると、また急に黒雲が出てきて、次第に広がり、東北に行き渡り、暴雨が降って来て浪もまた湧かんばかりの様子だった。

少し時が経ち、空は晴れた。
このとき、雨は山の東北のみに降って、西南には降らなかったという。

わしは思うにこれは蛟(みずち)のしわざだと思う。
蛟は世にいう雨竜と呼ぶもので、山腹の土中に居るものであるという。

『荒政輯(シュウ)要』にその害の除き方が載っている。
また世に「ほうらぬけ」と云って、処々の山半分がにわかに振動して雷雨誨冥(らいうかいめい:雷と雨が起こり暗闇となる)にしてそこから何かが飛び出すものがあった。

これを「ほうら」が土中に居る様だと云うが、誰もこれを正しく見た者はいない。
これはまた、蛟が地中から出たものと云う。

淇園(皆川淇園、みなかわきえん:江戸時代の儒学者、1735〜1807)先生はかつて話されたことがあるが、ある士人の所にいてたまたま目にした事だという。
「1日その庭を見ていると竹垣の小口から白い気が生じて繊々として糸の様である。
見るうちに1丈ばかり立ち上り、遂にひとかたまりの小丸の様になった。
またとび石の処を見ると、その平石の上が3、4尺ばかりが濡れて雨水の様のようになっていた。

その人は不思議に思い、かの竹垣の小口を窺い見ると、(白い)気が生じた竹中に蜥蜴(とかげ)がいたという。
この蟲は長身4足で蛟の類だという。

するとこの属(蛟)はみな雨を起こすものであるというのもうなずけよう。

巻之26 〔5〕  ← クリック 元記事

甲子夜話に出てくる「蛟(みずち)」の話は今のところこれ1件だけである。
ただ、「みずち」の「みず」は水で、「ち」はヤマタノオロチなどの「ち」と解釈もされており、水辺にいる蛇族の一種とも考えられる。
一般に、関東以北では「みずち」という妖怪めいた謎の生き物は蛇のような姿で捉えられる場合が多いと思う。
また、東北地方になると「ミズチ」は河童などを含めた水辺の不思議な生き物全体に使われ、これがアイヌに伝わると「ミントゥチ」は本土における「河童」などの水棲の半人半獣の霊的存在の獣一般を指すようになった。

甲子夜話では主な解釈も西日本での当時の「蛟(みずち)」の考え方を書かれていて大変面白い。

茨城県の利根町にはこの 蛟=水神 を祀る「蛟蝄神社(こうもう神社)」がある。

(前に書いた記事 参考:<日本語と縄文語(29) 九州地方の地名>

甲子夜話の面白き世界 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2021/10/02 10:18
コメント

管理者のみに表示