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甲子夜話の面白き世界(第12話)狐の話し(4)狐と火事

甲子夜話の世界第12話

(今までの「甲子夜話の面白き世界」の第1話からは ⇒ こちら から読めます)

 「狐」の4回目は「狐と火事」についてです。
昔は狐が火をつけて火事になったなどという話がたくさんあったようです。

《1》 霊妙なる狐

狐は霊妙なる者である。
平戸城下、桜馬場という処の士が屋敷にて狐が火を燃すのを見た。
若い士どもは取囲んで追うと、人々を飛び越えて逃げ去った。
すると物が落ちる音。
これを見ると人骨の様なものがある。
みなが言うには「これは火を燃すものに違いない。
取り置けば、燃すことは出来ない。
持ち帰って屋内においておけば、必ず取りに来るだろう。
その時、生け捕りにしよう」。
示し合わせて、障子を少し開けて狐がやって来るのを待っていた。
果して狐は来て、伺い見るようにして、障子が開いた所から面を入れては出したりを度々繰り返した。
人々は今や入ると構えていると、遂に屋内にかけ入った。
待ち受けていた者は、障子を閉めるが閉まらない。
その間に狐は走り出た。
皆は何が起こったのかと、障子の敷居を見ると、細い竹を溝に入れ置いていた。
それ故、障子が動かず。
いつの間にか、枯れ骨も取り返されてしまった。
さきに伺っていた時に、この細竹を入れ置いたに違いない。

巻之4 〔25〕  ← クリック 元記事

《2》 狐の祟りの話しもまちまち

印宗和尚の話。播州竜門寺との文通によると。
京東本願寺が火事で焼けた時に、尾州名古屋より仮のお堂を京へ送った。
海運の途中、船数艘に積んでいたら、柱積んだ中で大船2艘に船火事が起こり、積材は燃えて尽きてしまった。
人が云うには、これは狐の祟りかと。

また松尾華厳寺の手紙には、本願寺の本堂注文の中、大工の棟梁が心得違いを起こして、柱10本の長さ1間ずつ短く切ってしまった。
大きな木材なので、にわかには取り入れられなかった。
けれども、本堂の建て方を早急に調えることは出来ず、これにより仮のお堂の沙汰に及んだのだと。

前半に仮のお堂の事は本当に起こった事と記したが、人の口はまちまちで何が真実なのか。

巻之51 〔3〕  ← クリック 元記事

《3》 狐のうらない。火事の後に寺地を変える

溜池の嶺南(れいなん)坂は、今の品川東禅寺がかつてあった所である。
その寺の開山を嶺南和尚という。
明暦の大火(1657年3月2日〜3月5日)の後、品川に寺地を下されたが、その名残りで坂を嶺南と呼ぶ。
嶺南和尚はこの火災後、寺地を移すことを決め、移転先を決めようと、この寺開基の檀那伊東候〈日向飫肥五万余石〉と共に海浜を連れ立って歩いていた。
するとそこに、一匹の狐が現れて、嶺南の衣をくわえて引っぱった。
そのため、嶺南は即その地に寺を建てた。
今の東禅寺の由縁である。
この場所は、外門の額海上禅林と面している。

また、この寺の住持(住職)が遷化する(亡くなる)時は必ず狐が現れるという。
吉凶、いかなる兆(きざ)しか。
〈林氏云う。火事の後に寺地を変えることは、昔の定例でおびただしいことであった。
皆、官家の命に出て、私的に地を交換することではなかった〉

巻之70 〔23〕  ← クリック 元記事

《4》 地雷火と狐火

 長岡侯(牧野備前守)在邑のとき、火術を心得た家士どもが地雷火を試そうと、某の野山に仕掛けてやっていた。
来たる幾日にと伺い出たので、侯は許された。
すると、その前夜に1100の狐火が、その山野に満ちてさまざまの形容を為した。
あたかも地雷火がほとばしり走る様にその中に存在感をなしていた。
狐が物事を前もって知るのは、珍しい事ではないながら、火術の真似をするのは最奇聞である。

巻之31 〔4〕  ← クリック 元記事

甲子夜話の面白き世界 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2021/10/04 18:36
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