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甲子夜話の面白き世界(第24話)笑い話(落噺)2

甲子夜話の世界(24)

(今までの「甲子夜話の面白き世界」の第1話からは ⇒ こちら から読めます)

《11》 土座右衛門
 ある士が納涼に川辺を行くと、川中に浮かんで来る者がいた。
下僕に云う。「来るのは(流れてくる)人と思われるが。もしかしたら、泳いできている人か、見てくるように」。
下僕は即座に見て返ってきた。
士は「あれは土座右衛門だろう」と云えば、下僕は「いや、お名は聞きませんでした」。
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《12》 芸妓の屁
 ある元芸妓が禿(かむろ:童女)に手習いをさせていた時に思わず屁をした。
禿に恥ずかしく、偽って云った。
「あたくしの母からの教えに一月に一度ずつ必ず恥をかく様にとあるから、今月の恥をかいたのよ」と云った。
そういった口の下からまた屁をした。
元芸妓が禿に示して云うには。
「いくら親孝行だからといって、来月の恥までやるのは取り越しだわね」。(巻之続篇 巻之17 [1] ← クリック 元記事

《13》 鳶と自然薯
 ある士が今日は特によい日和だったので、下僕を連れて田舎へ遊山に出かけた。
そこで、自然薯を貰い、下僕に持たせて帰っていた。ところが、鳶に自然薯を奪われてしまった。
下僕は憮然として主に告げた。
「油揚げなら鳶も盗るだろうが。薯は何にもなるまいに!」と云えば、鳶は梢にいて鳴いた。
「ひいとろろ〜、ひいとろろ〜」。
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《14》 掛け軸
 ある人が、某の家を訪ねた。床上に掛け軸が掛かっていた。そこには文字が数行あった。
「何と書いてあるのでしょうか。この数字はいかなるものでございますか」。
亭主が答える「讃(さん)!」。
この男、また別の処を訪ねた。ここにも床頭に掛け軸があった。
男は賞して「讃は面白うございますね」と云った。亭主は「これは詩(し)であるぞよ」と答えた。
別な日にこの男、別の処を訪ねた。ここには絵はなく、横物即ち巻き物に文字ばかり。
男は「詩(し)は面白うございます」と賞した。ここの亭主は「ある禅師の語(ご)である」と答えた。
男ははや心得て、次の家を訪ね、そこではこう云った。
「語(ご)とは面白いものですなあ」亭主は「語にはあらず。録(ろく)なり」と答えた。
客は、そこを出て「おれは、三(讃)、四(詩)、五(語)、六(録)と転んでいくなあ。あ、次はきっと、七だな」と独り言を云った。
また日を改めてある豪商を訪ねた。素晴らしく美観の自慢の庭園だった。
家に上がり床上には、掛け軸があって、画上には数字が描かれていた。
客は「御掛け軸には七(質)とあるのでしょうか」と云った。
亭主の顔にはみるみる怒る色が現れた。
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《15》 大黒天の頭
 ある人が大黒天に申し上げるには、
「某ついぞ天の御頂(アタマ)を見る事がありませんでした。御坊さまか御髪のどちらでしょう。常に頭巾をめされておられるので、わからずにおります。何卒排したく思います。一日御浴の時に見申し上げたいのです」。
天(大黒天)は「心得ぬ」と仰せられた。
それで天の湯浴みの時をうかがって、そっとのぞき見たらば!
裸にはなられたが、頭には手ぬぐいを乗せられて、やはり御髪(おぐし)か坊さまかわからずであった。
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《16》 きのこ狩り
 母と娘がきのこ狩りに出かけた。
採りながらかれこれと云う中に、母が「この松茸のなりは大黒さまの御頭巾の様じゃ」。
聞いた娘は「あれあれ、勿体無き事を」
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《17》 釣りと見物人
 本庄辺りの櫓中で釣り糸を垂れる者がいた。
はじめて数刻、一小鱗も釣れず。その後ろから窺い見る者かいた。
嘆息して云った。「惜しくも空しい釣りの一日でしたなあ。それも一匹も得ず。これぞばかと云うものですな」。
釣りをしていた者は振り返り一言。
「ばかの事をずーっと見るのもまた、ばかぞ」。
遂に言い返せない。。
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《18》 弁慶の敏慧
 先年何かの随筆で読んだ。
義経が酒宴の席で憤る事があって、拳で弁慶の頬を打った。
弁慶はその次に坐す片岡の頬を打った。
片岡が怒って云った。「われ、何事か!わしの頬を打つとは!」。
弁慶は答えた。「回り打ちです」。
これで笑い話となった。
弁慶の敏慧(びんけい)見るべし
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《19》 納豆売り
 霜が解けた朝、納豆売りが荷を担ぎながら転んでしまった。
その時屋内より、「納豆〜、納豆〜」と呼ぶ声がする。
呼んでも呼んでも答えないので、外に出てみれば、納豆を地面にまき散らしている。
買い手は驚いて「どこか打ちはしてないかい。納豆はあるかい」と聞くと「いやいや、痛くも納豆もない」。
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《20》 さよう
 親が我が子に「何事も我を通すものじゃないよ。人の云うことにさようと答えるの」と教えた。
子はこれを守り、人に答える時はいつもそうした。
ある日、親類が集まり、話し合いがあり、後は言い合いになった。
声高にその子を証人にとり、「如何思う?」と云う。
子「さように存じます」と応えた。
また一方から聞かれると「さように存じます」と応えた。
後は、双方からこと繁く聞かれ、子は呆れ無言にしていると、一方の人が怒り「向こう方へ返答して、こちらへ返答ないのは、如何かしら?」と詰め寄せた。
子が云った「ごもっともに存じ候が、ただいまさようの緒が、きれ申し候」。
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甲子夜話の面白き世界 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2021/10/16 20:08
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