甲子夜話の面白き世界(第25話)笑い話(落咄)3

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《21》 御銚子の替わり
今は亡き夫人がまだおられたころ。木面(このも)という十二三の女小姓がいた。
宴を設けた折、銚子を変えよと遣わしたら、直に持ち帰った。
皆が話しかけた「どうして早かったか?」。
蓋をとって見ると、酒が入っていない。
また曰く。「宴は今始まったばかりだよ。どうして、こうなるの?」。
木面は答えた「御銚子の替わりと云えば、取り次ぎの人がいないと云うから、酒無しと思ったの」。
〈わしの領村の方言で、応辞がないと云う〉。
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《22》 鍛冶屋の引越
一儒教生の住家の西隣が鍛冶屋だった。
朝夜槌音がかまびすしくて、読書の妨げになっていた。
生は「他所に引っ越してくれないか」という。
鍛冶は「生憎、あっしはまだ貧しくてね。引っ越し賃を下さいよ」と言った。
生は最もだと思ったので、相手の望むままにした。
鍛冶は「明日引っ越しやす」と約束して引っ越して行った。
ところが!またその明日をさかいに、カンカン、カンカンと前の様にうるさい。
生は人をやりどんな事か見に行かせた。「西隣の家は空き家でした」。
また音がする。
生はまた人を遣ると「東隣に転宅してました」。
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《23》 手が上がる
続 巻之十七 〈一〉 手が上がる
手習い子が天神様を寿(ことほ)き、「どうか手が上がりますようにしてください」といった。
こうして毎日通っている。
ある夜、夢想に「汝に寿(ことほ)かれ久しい。けれども手習いが不精である。それでは上達することはない。これからは精を出すように」と言われた。
習い子は夢からさめ、早速天満宮に参詣して、「御夢想ありがたく存じます。けれども手習いは嫌でございます。何卒手習いをせず手が上がります様に」と祈願して、七日の間通夜し、祈願をした。
七日に満ずる夜の夢の中に天神現れ給い、「汝の言うところは承りぬ。ならば手を上げてとらそう」と言われた。
習い子は喜び、夢から覚めてみれば、肩から手がなく、両頬から(手は)生え出ていた。
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《24》 金時が出るぞ
世間の子どもが駄々をこねる時に「化け物が出るぞ」と脅して止めさせる。
続けて云う「坂田の金時は化け物を退治して、化け物はこれに勝つことはなかった」。
ある人が化け物の子どもが駄々をこねるのに出くわした。
化け物の母は子どもを泣きやますのにこう云った「金時が出るぞ、出るぞ」。
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《25》 迷子
五六歳くらいの迷子がいた。町役人は住所を尋ねるがわからない。
腰に迷子札があるかと見るがない。着物の下に書いてないかと、着物を脱がせ見るがそれもない。
臀部に大きな痣(アザ)がある。町役人は近づいて見ると屁を放った。
それを頼りに聞いて回るが住所は分からない。
町役人は独り言を云った「尻にアザ、屁となると、麻布の者ではないかなあ」。
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《26》 やせ我慢
衆分(シブン、盲人初官、座頭の下位)が装束を着て路を行く。
誤って大溝に陥った。通行人が驚いて、哀れみ助けようとした。
衆分騒がず「孑孑(ボウフラ)をとるところ」と云った。
通行人は不審に思った「衆分どの、捕ってどうするのじゃ」。
衆分が答えた「検校(検校金魚)に食わせたくてな」。
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《27》 耳が聞こえなくなった年寄りの小言
ある年寄が年老いて耳も聞こえなくなってしまった。でも常に子孫に小言を云っている。
子どもを顧みて物語る 「今どきの者はどうも不精でいかん。わしらが若い時は」とかようにはなしと云う時、飼い置いた鶏が側で時を作った(鳴いた)。
老人は云う「あれを聞きたまえ。人ばかりではなし。鶏さへ、今どきは羽ばたきばかりして鳴きはせぬ」。
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《28》 親が子どもへ教え
親が子どもを教え戒めている。「よく思いたまえ。親を求めようとしても千金でも買えないのだ」といっている。
子どもはひれ伏して謹聴している。
親はなおいうと、子どもは少し頭をあげ、
「ごもっともに承りました。しかし(親を)売りに出して、三百でも買い手はありますでしょうか」
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《29》 座頭
座頭が両国橋に行きかかった。杖が、犬に当たって、犬は驚いて、鳴いて走った。
座頭も驚いた!
また歩いて数歩!また、また、
また杖が、、、犬に当たってしまった!
犬はまた驚き、鳴いて、走った!
「これは長き犬よの!」と座頭は云ったとさ。
《30》 ばか貝売り
ばか貝売りが「ば〜か〜、ば〜か〜」と云って売り歩く。
ある戸口から「ば〜か〜、ば〜か〜」と呼ぶ声がする。
売り手は振り向いて「ばかとはお前か!!」
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