fc2ブログ

仏さまと聞いた調べは心地よく、幼き日の思い出がよみがえり・・・

 昨日は一日中雨降る生憎の天候であったが、旅ぶらでお世話になった縁で知りあった方のお誘いを受けた企画に出かけた。

萩原嘉市コレクション「SPレコードと蓄音機によるコンサート ほとけ様と一緒に聴く、妙なる音楽時間」

へ出かけた。

行くまでは、お病気になった方も今は元気だと聞いて、是非会いたいな~ と言うくらいの単純な思いであった。
しかも生憎の雨。また次第に雨脚も激しくなるという予報。

車で1時間くらいかかるし・・・・ など恨み節も。
ただ、前日の土曜日にも、安婆様こと、大杉神社へ風の会の新入会員さんを案内し、江戸崎なども案内して、当日はこの催しだけにしていたので、早めに昼食を済ませて12時前に出かけた。

美浦村の陸平(おかだいら)貝塚の入り口にある妙香寺さんが、この日の会場であった。

それほど多くの方はこられないだろうと思っていたのだが、驚く事にたくさんの方がお集り。
50人近くおいでになっていたと思う。
傘をたたんで、靴をビニール袋に入れ、受付をして本堂に・・・

コンサートの最初は本堂の隣にある「薬師堂」で行うというので、また靴をはいて移動。
ただ雨はまだそれほど強くは無く傘はなくても移動は出来た。

この薬師堂の建物は新しく建てられたようだ。
中には立派な茨城県指定の丈六の巨大な薬師如来立像がおられた。

P5071168s.jpg

室町末期頃の像で、寄せ木造りの像だという。
左右に置かれた像があまりにも小さく見える。

コンサートの始まりとして、この像の前で、ご住職(山本住職)さまの般若心経を皆で聴いた。
とても力強くも優しいお声が薬師堂内に響き渡った。

P5071166s.jpg

その後この場でレコードを1曲聞き、本堂に戻って、本格的な蓄音機などのお話しとレコード鑑賞がスタートした。

P5071161s.jpg

ご本尊様と並んだ蓄音機
ホーンの直径は750mmあるという。

P5071179s.jpg

製作されたのは今から90年前の1932年。 昭和7年。
私は地元の生まれではないが、15年ほど前にやってきた石岡の街で起こった大火は昭和4年。
この頃は町も元気があり、復興にも勢いがあった。
今は昭和レトロの漂う看板建築も昭和5、6年の建築だから、この蓄音機の年代でついそんな昔の町の姿を想像してしまった。

P5071182s.jpg

こんな電気のアンプも使わない機械式の蓄音機は私の記憶にはない。
ビクターの看板で見かけたくらい。

P5071183s.jpg

針は主にサボテンの棘と竹。鉄の針はレコードの溝を削ってしまう恐れで、レコードを大事にするにはあまり使わない。
上の写真のはさみのような物は、竹の針をこれで切り、針の先端を再生するという。
毎回のように尖らせながら使う気の使いようだ。
やはり音を聞けば雑音が混じったりするのだろう。
この本堂内にも大きく心地よい音が響きわたった。

1部と2部との間で 美浦村の元村長である市川紀行さんが2020年に出版された詩集「ANTHOLOGY」の中から、
「母に」と題された詩の9番目「シクラメンの花」を市川様の奥様が朗読してくださいました。

------------------------------------
【母に 9】

 母さん ぼくらが小さかった頃
 シクラメンの花なんてあったでしょうか

 秋の夕ぐれ
 村の道は白くかわいて
 わだちの中に草がのび
 野菊や野いちごの花が埃をかぶっていた
 坂を下りはじめると
 牛久沼が赤く染まって
 ああ ぼくは母さんの手を握り
 買ってもらった「小学四年生」を大事に抱えた
 土手の下のわら屋根の家から
 ゆっくり煙がたちのぼり 秋の取り入れ
 牛の荷車がごとごとと行き
 追いついた僕を乗せくれた
 母さんは牛に悪いと遠慮した
 おじさん あははと笑っていたっけ

 野に咲く花の赤や白
 田舎の道のゆらゆらと揺れ

 母さん ぼくらが小さかった頃
 シクラメンの花なんてあったのでしょうか

-------------------------------
この詩を聞いて、私の脳裏に昔の私と母との情景がふっと浮かんできた。

P5081161s.jpg

今、この詩集と部屋中に今も満開に咲くシクラメンの花を眺めている。

私は冬は豪雪で知られる新潟県小千谷市の生まれ。
まだ幼い時に横浜に移り、我が家は小さな家を借りて住んだ。
小学1年の終わりに、東京都下の都営住宅に一家で移った。

今は亡き母さんもその頃、若くて元気だった。
都営住宅など、2軒が並んだ集合住宅だが、それぞれに庭もついた長屋だった。
窓には雨戸が付いていて、毎朝晩に開け閉めをした。
越して来たばかりの時、僕は母に「夢じゃないよね。」と雨戸を閉めながら言ったという。

母はこれが嬉しかったようで、事ある毎に、もう可愛くなくなった僕を見て
「あの時こんなことをいっていたのよ。可愛かったわ。」
などと、繰り返し言っていた。

ほとけさまと音楽と朗読を聴きながら僕の心は遠い過去をさまよっていた。
陽が輝き、土手の道に野ばらの花が咲き、雑木林には草木瓜の赤い花が咲き、木漏れ日が射したり、風が木々や木の葉を揺らし、時には小雨もぱらつく。
そこを抜けると広々とした原っぱが広がる武蔵野の何処にでもある風景が・・・・・
そして母は、重い内職の機械編み機を手に提げて、多摩湖から流れてくる水道道路をよく歩いていた。
重かっただろうな。その母ももういない。

そして第2部では山本さんが選んだ「菩提樹」の曲が・・・・・・
本堂の奥にはこの寺のほとけさまがやさしく微笑む。
インドボダイジュと中国から伝わったとされる菩提樹は違うのだと。
これも新しい知識だ。今まで見てきた可憐な花をつける菩提樹はインドの菩提樹ではなかった。

P5071161s.jpg

P5071173s.jpg

山本さま、素敵な時間を有難うございました。
何時までもお元気で、また素敵な企画があればご連絡ください。


選ばれた曲はメンデルスゾーンやモーツアルト、シューマン、ドボルザーク、シューベルトなど・・・
シューベルトでは アヴェマリアをマリアン・アンダーソンの歌のレコードを・・・(Tube参考⇒こちら


近況 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2023/05/08 11:35
コメント

管理者のみに表示